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年下に、『人には星の巡りとか目に見えない力が働いていて、不幸を呼ぶ人とかは本当にいる。だからなるべくそういう人とはかかわるな』とよく聞かせている。実体験からなんだが。
おはようございます。 話題:ちょっとおどろいた話 しばらく前にキャバクラで、(半年に一回ぐらいしか行きません)飲んでいたら女の子と貧乏自慢になって、オレが、モヤシにしょう油をかけて食べたと言うと、 『あたしなんかお父さんと夜逃げして2年も山の中で暮らしていたよ』 と返された。 車中泊とテント生活を2年間。なんでも、目の前でお父さんがロープで縛られた事もあると言う。で、家財道具もまるまる燃やされ、山に逃げ込んで暮らしていた。 この平成の世の中に。 度肝を抜かれたが、 『でも、あたし、お父さん大好きだし、飯ごうで炊くお米って美味しいんだよ』 と、笑いながら言う彼女の言葉に、談話の締めくくりが和むものとなったので、よしとする。 〆。 ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-30 22:19
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![]() 地 這 い 虫 寝不足の目に眩しい朝日が昇る。 屋台のラーメンは朝の7時半まで開いている。和季と加藤は肩を並べて腹におさめた。アルタ前の広場を横切り新宿駅の地下へ。 サラリーマンと夜の仕事を終えた者達がすれ違う。 中野駅で電車を降りて加藤のマンションへ向かうと、中野ブロードウェイが薄汚れた姿を見せる。 他人の家に招かれるは久しい。 珍しいモノを見せると言う。 居候の新人ホストを無視して、リビングのクローゼットから、長細い木箱が取り出される。 布をほどくと白木の鞘に収まった刀が2ふり、伯耆守正幸、(ほうきのかみまさひろ)と国広、(くにひろ)が収まっていた。 『オレの実家は神社なんだよ。茨城県の鹿島郡。神道流だ』 鹿島神道流、(かしましんとうりゅう)。 ー実戦剣術....、 剣聖、塚原卜伝、(つかはらぼくでん)を始祖に持つ関東剣術の礎。 江戸期に双璧を成す柳生新陰流、(やぎゅうしんかげりゅう)が政治家へ転身したのに対し、神道流は滅びるまでかたくなに剣術で通した。 足利義輝や上泉元綱などの剣豪を生み出した名門。 『家は代々相伝で教えるんだ。絶やさない為に。子供の頃は好きでやってたけど、途中から組み打ちの方が面白くなってさ。武甲流は爺さんから教わった。こいつは、金に困ったら売っちまおうと思って、実家を出る時に盗んできたんだ。だけど売ったら、いよいよ帰れなくなると思って、売れずじまいなんだな』 コレクターの手許に置かれると刀剣は輝きを失う。 良き使い手の側にあってこそ道具は光るもの。 薩摩鍛治を代表する正幸と、幅の広い刃の無骨な国広。国広の方は信州の山奥でヤマンバなる妖怪を斬った伝承を持つだけの事はある。長さと厚みのある出刃包丁にも見えた。 国広を持って立上がる。 抜刀する。持った感触もバランスも良い。正宗の繊細な造りと違って荒々しいが、これなら実戦で刃がこぼれても、即砥石で研いで次に備える事が出来る。 おそらくは人など、せいぜい斬れて2人。1人目の血と脂で本来の斬れは発揮出来ない。 後は突くか、叩くか。 ならば戦場ではやはり、『槍』の方が使い勝手が良いだろう。 宮本武蔵に破れた宝蔵院も戦場でならば退けはとらなかった筈。余談だが、一揆鎮圧に加わった宮本武蔵が、農民の投げた石にあたったのは有名な話だ。 鞘に納めた。 布に包んで箱にしまうと加藤が眠ると言うのでマンションを出た。 事務所に戻ると若い衆がまかないを作っていた。封建社会は節度と規則の塊だ。無頼の世界は厳しい。 和季はビルの地下駐車場の一角にある事務所に向かった。近辺の飲食店などを管理するのはこちらの事務所になる。 椅子を並べて南太郎が眠っていた。 起こす。 風間から、 『メガネは田舎に帰せ』 と言われた。 ヤクザ事務所だ。出入りしてもいい事は無い。だが、南太郎、意外に強情で、『和季さんがいっしょなら帰ります』の一点張り。事務所の椅子に寝泊まりをして、もう10日。 風間は見抜いていた。 田舎者が都会の毒に当てられた。 悪所の味を覚え、あのフィリピン女が忘れられない。もっとも、ハマるのならば、やり直しのきく若いうちの方がいいが。 雷島に呼ばれた。 藤老人が出かけるようだ。先ず和季が事務所から出て辺りを見回すと、雷島が老人の傍らに添って、路肩のベンツに乗り込む。 『小石川のアンチャンのところへ、やってくれ』 雷島の返答に間があった。 何やらふくむ所があるらしい。 数時間後、小石川植物園の近くにある飲食店に老人の姿が見出せる。 藤庄吉が兄と慕う主人が、すっかりと禿げ上がった額をさすりながら、カウンターについた。 前掛けと薄汚れたダンガリーシャツ。今はただの年寄りにしか見えないが、その昔は名の知れたばくち打ちであり、香具師、(やし)であった。 ー香具師とは....、 昔から世の中には、『殺人』を生業とする者達がいて、それを取り仕切る仲介者が香具師だ。表向きは一般人に紛れて何食わぬ顔で生活をおくっているが、縄張りがあり今も受け継がれている。 日本で変死しても解剖されるのは10パーセントにも満たない。老衰以外は自然死ではないのに手が回らない。つまり、『殺人の見逃しは多い』と指摘する医者もいる。行方不明者も入れたら年間にどれほどの人間が彼らによって葬られているのか見当もつかない。 行政の目がとどかない深い闇の世界。 殺人天国、日本。 『庚申塚、(こうしんづか)の舎弟が亡くなったな』 『知ってるよ。葬式は出さなかったみてぇだ』 『妾と住んでたんだが、ほら、15も歳の離れた女なぞ囲うから、心臓がパンクしちまった。女の、腹の上で死んだんだから、つまんねぇ人生だよ』 主人は黙った。 間を置いてから、 『あいつ、仕事を残したままでな....』 と言う。 藤老人が、ポカン、と口を開く。 絶句した。 庚申塚の舎弟も同業だった。香具師が仕事を残すと云うのは、信用の商売であるからして、誰かがそれを成し遂げないと業界に悪影響を及ぼす。 仲間内で引き受けるのがしきたりだ。 藤老人も打ち明けられた以上はつき合わなければならない。 なにしろ扱うのが人の命なのだから生半可な事ではない。 『他の香具師に頼んでみちゃどうだい』 『ダメだ。前金を払っちまったから仕事師は決まってる。山口の方から呼んだみたいだ。だが、評判は知らん』 『そいつはいけねぇ』 『今からじゃ他も探せない。人手不足なんだよ。外国人は荒っぽいし。そこでだ、事が終わるまで、風人車でそいつの身柄だけ、あずかってもらえないか』 『それくらいならいいよ。が、貰うものは、貰うぜ』 何人もの仲介者が入るので、実行者が手にするのは元金の半分ぐらいになってしまう。それでも仕事が大きければ、平均的なサラリーマンの数年分の収入が一度で入るが。依頼者を知るのは頼みを受けた香具師で、段取りをする香具師には的しか知らされず、小石川のアンチャンは後者になる。 尋ねるのも御法度。 藤老人は表に出ると青空を見上げながら思った。 それにしても、 ー殺人の業界が人手不足....、 とは、東京には人が多すぎる。 明くる日に仕事師は到着した。 痩躯に張り付いた浅黒い肌の冴えない風体の男。見た目は40歳半ばだが、頬は痩けて、カマキリが服を着ているよう。 細い笹で切ったような眼からは心底がうかがえない。 その癖、笑顔だけは人なつこい。 老人は嫌な予感がした。 ーこいつは、吐き気がするような事も、やってのける....、 きっとだ。 雷島に案内させて中華料理店で食事を済まさせ、向かいのラブホテルに部屋をあてがった。 時間を見計らって女も呼んでやる。デリヘル嬢。帰りに事務所に寄らせ、藤老人があれこれと尋ねると女は顔をしかめ、『気持ち悪かった』に続いて、『エッチは普通だけど、笑っていないと、目を合わせられない』と言う。 無防備な人間では感じれない、裏家業の臭いを感じ取っていた。こんな小娘に、少しでも気取られるような男に、まともな仕事が出来るだろうか?。 のん気は取り返しがつかない場合もある。 庚申塚の舎弟は、巣鴨の地蔵通り商店街の角、庚申塚の近くに住んでいたのでそう呼ばれていたのだが、小石川のアンチャンの後ろ楯あってこそ、仕事になっていたようなものだ。 尻拭いはいつもアンチャンがやっていた。 だから都内の仕事師達も嫌っていて、わざ、わざ、遠くから正体不明の人間を呼ぶはめになった。 加えて問題は受けた仕事の中身で、どこかの小金持ちの財産争いぐらいならいいが、政治や企業がからんでくると一筋縄ではいかない。あるいは、今ではほとんど金で解決しているが、組同士のいざこざ。 それでも歌舞伎町にいるような三国人に頼むよりはましだが。 多くの仕事師を見てきた経験から、段取りに入った友人の身が心配になり、仕事師の男を雷島と和季に交互に見はらせるとした。 雷島に番をさせている間に、和季をバーに呼び出し隣に座らせ、ハイライトに火を着ける。 仕事師はラブホテルに籠って出かけるつもりはないらしい。 歌舞伎町で夜に出歩かない。こんな損な話があるのかと、老人はつくづく、庚申塚の舎弟の人脈の無さに肩を落とした。自分があの歳にはまだ、飲み屋の女を口説いて部屋に転がり込み、朝までいい思いをさせてもらったもんだ。 甲斐性が無さ過ぎる。 『センスがないね』 と、呟く。 顔をのぞくと、『いや、独り言』と答え、老人は続けた。 『なあ和季、ずっと昔に学生運動ってのがあってな、学生が熱病みてぇに、共闘、共闘、って叫んで、セクトだのなんだのと徒党を組んで、他の大学に殴り込みに行ったんだ。内ゲバとかってな。バカだろ。オレもその時に狩り出されて、1人、殺っちまった』 少し酔っている様子だ。 こんな話をする時の老人は、いつもの好々爺と違い、何処か遠い存在に思えた。境界がある。越えれない一線の向こう側の、法の外に身を置く者の異質な雰囲気。 殺人を犯すと云うのは、ある意味で、『人』を超えている。 否、辞めているのだ。 捨てている。 『昨日会いに行った小石川の人とはな、若い頃にそうとうもんちゃくあったよ。オレは組を持たされたばかりだし、あっちは愚連隊でな。今じゃアンチャンとか呼んでるが、角材で頭割った事もある。互いに取り巻きを連れて暴れまわった。スケベエで、派手好きで。でもな、何年も見なくなって、ゴールデン街の飲み屋で飲んでたら、ばったり出くわして、1人だったから誘ったら、ひょこ、ひょこ、着いて来て、意気投合して友達になった。不思議なもんだよ』 和季には分からない老人のノスタルジア。 何かを思い出して苦笑しながら老人は煙草に火を着けた。 『アンチャンと仲悪かった原因は、女の取り合いなんだけどね』 いずれ物語りとして書くかも知れない。ある組長の女を寝取ったのが原因だ。女は刺青を入れられて行方知れずになった。大胆なのは老人だが、想いをよせていた小石川のアンチャンは面白くない。 もっとも、真相を聞いたのは親しくなってからも、ずっと後の事なのだが。 それだけに恋慕の情の深さが知れる。 『勝ったのはオレ』 頬を弛ませた。 仕事師は数日をラブホテルで過ごした。 食べ物は質素なものばかりを注文して女を求める事もない。 出かけずにテレビばかり見ている。ひっそりと生きる事を旨としている一般人の見本のようだ。派手好きのアウトローでもなければ陰湿なマニアでもない様子。 顔は笑っていても目の奥には鈍い光が宿っていた。 擬態なのだ。 藤庄吉の好々爺も、この仕事師の笑みにも、裏には暴力が潜んでいる。 メモと菓子折りを渡される。 『これを、小石川のアンチャンに届けてくれ。オレの携帯のメールアドレスだ。頼まれてたんだよ。3時から5時の間にな、仕事の邪魔になるから』 電車とタクシーを乗り継いで行く。 戸を開けると、店内に椅子を並べてアンチャンはうたた寝をしていた。 和季が何度も声をかけ、やっと、 ーはい、はい、寝るほど楽があるなかに、浮世のバカが起きて働くってね....、 ぼやきながら振り向くと、眼鏡をかけなおして訪問者を確かめた。 『風人車の若い人か、さ、さ、入って座りなよ』 菓子折りを渡して即帰ろうとする和季を吹き出しながら引き留めた。 流石に読み尽くした数多の本の中にも、年輩者に対する気遣いの仕方は書かれていたとしても、そこはそれ、己で覚えるしかない。 『忙しないねぇ、もっとも、オレもそうだったけどね』 きゅうすから茶が注がれる。 『今川焼きじゃねぇか。恐れ入った。オレみたいな下町育ちは懐かしくて今でも食いたくなるんだよ。むかし竜泉寺の近くにあった今川焼きがうまくてな、よく買って帰ったもんだよ。庄ちゃんはやっぱり気が利くな。おおっ、冷めてもうめえ』 こういった食い物は、冷めても美味しいように考えられていると、藤老人が言っていたのを思い出す。 自分の食生活を思い出すが、妙にぼんやりとした記憶しかない。 カレーライスが好きだったとか、コロッケが好きだったとかの思い出があっても良い筈なのに。 美食を学問にまで押し上げたブリア・サヴァランは、食べているものでその人間の人格を当てると言ったそうだが、和季は食にかんしてはこと質素に育てられた。 粗食で鍛え抜かれた。 加えて恐ろしいのは父親が子供に飲酒を強制していた事。これは、『アルコールで思考を鈍らせない為』であり、嗜ませたのではない。 小学生ぐらいの男の子が酔っぱらうのは痛々しい。 不憫だろう。 『庄ちゃん、あんたのところの庄吉さんね、いっしょに新宿で悪さしてまわった仲だけど、ケンカもしたんだぜぇ。角材で頭かちわった事もあったな。若い頃はどっちも手のつけられないきかん坊でさ、互いに取り巻き連れて歩いてたな。GHQの倉庫を荒らしに行ったら、一足越されて、やられたって事もあった』 話が食い違っている。心理学の本によると、『思い込み』というのもあるらしい。 思い出は上書きも出来る。 『庄ちゃんとはもんちゃくもあったけど、楽しい時代を過ごさせてもらったよ。戦争が終わって世の中がすっちゃかめっちゃかでさ、みんなが明日のメシの心配をしていた。イモ粉の蒸しパンばっかり食ってたな。食い物屋がはじまった時は、これでやっと日本も立ち直ると思ったね。そしたら見てみなよ、東京オリンピックだ、やれ新幹線だってさ。アイティだ、インターネットだとかって騒いだって、あの頃の活気にはかなわねぇ』 ー相手が上機嫌で話してる時は、黙って相づちをうってな。そうすりゃけっこうな話が聞ける....、 とは藤老人の言葉だ。 実体験は達者な文よりも確かに伝わる。 黙って相づちをうつが、神妙な顔を作ったり、愛そうを浮かべるほどの器用さはない。 アンチャンは破顔した。田舎童子の笑みのように心が和む。どうにも老獪さとは、こういった仕草に出るのではなかろうか。 人をたらし込む技術は老人たちのほうが常に数段上を行く。 『メールアドレスありがとうね。それと、これ、あの山口の男に渡して』 小さな包みを預かる。 軽い。 和季は無表情のまま表に出ると巣鴨の駅まで歩いた。若者の足ならばそれほど苦にもならない。 事務所に戻ると包みを藤老人に渡す。 包みはソファに座っていた風間に無造作に放られ、風間は眼を細めて包みを眺めていたが、若い衆を1人呼ぶと向かいのラブホテルに囲っている仕事師に届けさせた。 『何だ、あれは』 『連絡用の携帯電話でしょう』 『嫌な仕事を引き受けちまった。迷惑かけるなぁ』 『うちは部屋を貸してるだけですから、問題はありません』 『....、』 『なんです、きゅうに黙って』 『六本木の鮨よしの鮨が食いてぇなあ。オレが子供の頃は浅草で蕎麦屋をやっていたんだが、旦那が早死にしちまってさ、そこの女将さんと息子で出した店なんだが、雰囲気があっていいんだよ。女将さんももう亡くなったけど綺麗な女だった。江戸前のべっぴんで』 『茶々丸のママさんは?』 『ありゃ山形だ。今じゃすっかり江戸紫だけど』 ーこんなあたしに誰がした、真っ白にして、返しやがれ江戸紫....、 都会で身を持ち崩した田舎娘を歌った都々逸。 傍で聞いていた和季は、小石川のアンチャンの話と照らし合わせ、味覚は記憶を蘇らせるものなんだろうと思った。 一方で事務所向かいのラブホテルの一室、包みは風間の察した通りプリベイドの携帯電話であった。 添えられたメモの番号にかけるとしきりに頷く仕事師の男。 携帯をしまうと目をパチクリさせながら懐中のボールペンを探った。デルフォニクスという海外メーカーのボールペンだが、ちょっと大きめの文房具屋ならどこにでも置いてある。 奇妙な事を始めた。キャップを外すと芯を抜いてなにやら押し込み、それを照明の下に晒すとボールペンの先端が、キラ、キラ、と輝く。 満足げに笑う。 薄く、気味の悪い笑みであった。 明くる日、仕事師が事務所に向かう。藤老人に仕事の段取りについて頼みがあるとの話だが、仕事師だけに警戒されて事務所には入れてもらえない。 風間は外回りに出ており、雷島と和季が立ち会う事になった。 日時と相手を告げた。 大手広告代理店の重役であった。 やはり企業絡みかと藤老人の眉間に皺が寄る。 実入りは良いが足がつくとやっかいだ。政治と企業とヤクザは深く絡み合っており、どこでどんなしがらみがあるかも知れない。 数年前に政治家の某が自殺とされたのも、実はある大物政治家の献金疑惑を国会で告発しようとした口封じだったのだが、彼らにも血のバランスシートのようなものがあり数年後、対抗する派閥のある大臣が陥れられて、公衆の面前で大恥をかかされた挙げ句に自殺に見せて殺された。 全て仕事師の仕業だ。彼らは総力をあげて依頼者を割り出そうとしたが、裏社会の特殊なルールが立ちはだかり、皆が口をつぐんでしまうので最後まで分からずであった。 歌舞伎町に防犯カメラが設置されたのは、そのとばっちり。 何事もやり難くてかなわない。 嫌がらせだ。 『なるほどなぁ』 老人は仕事師を送り出そうと先立って表に出た。話を聞いて気を許した。 『あんたも苦労するぜぇ』 『はい。でも、うちの娘が体弱くて』 『入り用か』 『そうです、はい』 汗を拭おうとハンカチを取り出す。気温はそれほどではないのに緊張しているのだろうか。 老人が空を仰ぐ。 『それにしても』 ー殺人の業界が人出不足....、 か、 襟の内で呟いた。どうも藤老人、このフレーズが気に入ったようである。 仕事師がうめき声をあげる。 気付くと和季が左手を捻りあげていた。雷島もあっけにとられている。これから仕事に向かう客を送り出す所なのに。 男の手から棒状のものが転げて落ちた。ボールペンであった。 『雷島さん、それを、拾って下さい』 雷島は拾い上げるが意味が分からなかった。 和季は空いた手でボールペンを受け取ると先を男の頬に向けた。 すると、先端を15センチも近付けたところで、頬から薄ら血が滴ってくるではないか。 ー垂刀/すいとう....、 戦国期ぐらいに日本に伝わった暗器。 鉄を細く長く針のように研いで心臓を貫くと心臓発作に見せかけられる。 見抜くのは現代医学でも困難だそうだ。なにしろ、アイスピックで刺された死体を殺人と分からぬまま済ませようとした検死官がいたそうだから、こんな暗器を使われたらなおの事だろう。 和季が感じていたのは仕事師の体つきや身のこなしが鍛練されていない事。武術の心得は無い。だとしたら人を殺めるのにはおそらく暗器。暗器使い。これが結論だ。何気ない日常の仕草の中にモーションを隠すのが暗器だから、いまのハンカチは露骨なほどに分りやすかった。 『なんだ、的は、オレだったのかよ』 雷島の大きな拳がしたたかと腹を打つ。仕事師は元プロレスラーの腕力に、きゅ〜う、と情けない息を漏らして気を失った。 事務所に戻るとすっかり老人は取り乱した。 そわ、そわ、して落ち着かない。 少しして老人の携帯電話にメールが届いた。小石川のアンチャンから。 てん付された動画を再生する。 アンチャンは禿げ上がった額を撫でてから話しはじめた。 ー庄ちゃん、今川焼きうまかったぜぇ、ごちそうさま。携帯電話の使い方はね、巣鴨のホステスに教わったんだけど、すげえな、ちゃんと映ってるだろ、オレ。で、これを見てるって事は野郎が仕事をしくじったって事だな。すまなかった。あのバカが受けた仕事の相手が、庄ちゃんだって知った時は度胆を抜かれたぜ。相手が風人車の組長さんじゃ、そりゃ東京の仕事師は断るよ。ぜったいに面は割れる。命は惜しいからな....、 老人は意外にも冷静さを取り戻した。 ーオレも断ろうと思ったが、舎弟が死ぬ前に金を使い切っちまった。伊豆に別荘を買いやがった、女にねだられたらしい....、 『おい、雷島、車回せ。出かけるぞ』 会って膝を突き合わせて話さねば気が収まらない。 動画はまだ続いた。 ーだからどっちにも詫びようがねぇんだ。許してくれ、このとおり....、 深々と頭を下げる。 ーところでオレも、生きてるのがつまんなくってよぉ、若い頃は良かったな、金なんか無くても、いいもの食って、いい車乗って、いい女抱いてよぉ....、 『はあ?』 ーじゃあな、庄ちゃん、一足先に、行ってるぜぇ....、 動画が途切れ、藤老人の血相が変わった。 電話は繋がらない。雷島の運転で小石川の飲食店に駆け付けると、カウンターの奥には小石川のアンチャンの、禿げ上がった額の老人の死体が、地を這う虫のようにうずくまっていた。 『アンチャン』 服毒自殺だった。 毒をあおったグラスに結露した雫がカウンターに環を描く。 水っぽくなったハイボールの、上から下に向かって薄くなる茶色のグラデーションは、人の生き方が皆同じで、『若い頃の勢いを晩年までは保てないのだぞ』との暗喩のようであった。 妻は数年前に亡くなっていたし、2人の息子は女癖が悪く元ヤクザ者の父親を見限っており、所帯を持ってからは絶縁状態であった。数日後、斎場で骨になったアンチャンは、少ない友人に見送られ都内の寺に納められた。知らせは届いた筈だが息子らは最後まで姿を見せなかった。 世間では詫びてすませる事でも、裏社会の掟ではすまされない場合がある。 板挟みになって全てをひっかぶった。命でけじめをつけるのが、永年のしがらみと友情に、彼なりに一番答えられる結末であったのだ。 骨になった親友と対面した藤老人は人目をはばからずに泣いた。 和季が老人の涙を見たのはこれが最初で最後である。 最期の文句である、 ーじゃあな、庄ちゃん、一足先に、行ってるぜぇ....、 が、胸の内でこだまする。 『何が、一足先にだよ、大バカヤロウ!』 張りのない罵声。 瞼の裏に若かりし日々を思い出す。 まだダンスホールなんてものがあった時代、きちんとアイロンがけされたスーツ姿のアンチャンと、着流しにインバネスコートの藤庄吉がつるんで歩けば恐いものは何もなかった。昭和の、古き良き東京に生きたアウトローは最期まで潔く、まるでフェンスを軽々と乗り越えるような勢いでその人生にけりをつけた。 が、己は汚れた浮世に、まだしばらく留まろう。 生きるだけ生きてから死ねばいい。慌てる事はない。どうせ残された時間は少ない。 絶頂のまま生きて死ねる人間などいないのだ。少しづつ老いて、失って、消えていくのが命なんだろう。親しかった人達に記憶だけを残して。 小石川のアンチャンには泣いてくれる親友が1人だけいた。 それで充分かどうかは故人のみが知る。 ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-25 21:40
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![]() 22歳のころ、この男はなにも持っていなかった。 それはいまも同じかも知れない。が、ずいぶんと動きが悪くなったと思う。 あと10年、20年たった時にまたどう思うのか。 だから、このSelf Portraitsを残しておく。 ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-25 20:36
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Itaruくんの作品を聴いてしょうじき、
『上手くなったな〜』 同時に、 『追いこされそうw』 と思った。やっぱり積み重ねなんだよね、なんでも。 でね、情熱を持ち続けてる彼と仲間たちを羨ましくも思ったよ。 一部上場企業の社員です。外車を乗り回してます。近々高級時計も買いますよ!。 だから?。 20代のオレが今のオレを見たら、 『おっさん、魂まで汚れてるぜ』 とか言うだろうな。いちばんなりたくないタイプの大人になったかも知れん。 ちゃん、ちゃん、 ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-21 23:47
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Itaruくんと池袋で会った。
アルバムをリリースしたそうで、モス、ラーメン、公園と、学生時代みたいなコースでゆっくりと話した。 クオリティはファーストよりも格段に上がったと思う。音色にも豪華さが出て来たし、フレージングもよりファンタジックにItaruくんらしさが出ている。 メンバーチェンジはサウンド的に良い方向へと転がったし、なによりもエンジニアを雇ったのが偉い。 演奏と録音は別の技術とセンスでさ、分けて考えないとダメだよ、やっぱり。 リズム隊がしっかりとメロディを支えて聴きやすいね。 1200円もリーズナブル!。 ![]() ![]() ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-21 22:41
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バイセクシャルってバンド知ってますか?。
田代まさしさんが司会をやっていたコンテストに出ていたのですが、オレは風邪をひいて高校の修学旅行を休んで見ていたので、よく覚えています。 大嫌いでした!。 でもベースの人だけはカッコ良かったんです。 とうじ未成年だったんですね〜。凄っ。 後の、『Zigzo』は演奏もまとも。ちょこっと聴いてみて下さい。 ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-16 23:34
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湯舟で読書するのと寝酒がクセになってしまった。
おはようございます。 話題:ピザーラ、お届け! ![]() さきほど、定食屋でラーメンと麻婆豆腐を食べたのですが、物足りなくてピザを頼んでしまいましたw。 ブランデーの紅茶割りでじっくり頂きました。 美味かったっす!。 ....、 さて、さて、行きつけの定食屋はご家族でやってますが、常連さんと仲良くなりつつあります。 年配の男性に携帯電話の待ち受け設定をしてあげたのがきっかけですが。 寒くなる年の瀬に、誰かと話せるのはとても幸せな事と思います。 書きかけの長編小説も佳境を迎えました。 ここにはアップしませんけどね。 密やかな楽しみであります。 云々。 〆。 ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-12 22:18
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ああ〜っ、野宿した〜いい。
どうかな?コルベットで野宿。 やっぱりテントが必要になるな。 あまり山奥には入れないけど、ラゲッジは広いから、装備を持っていけばそれなりに楽しめる。 と、思うw。 アメ車で野宿ってのも、いいかもね。 ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-09 22:50
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この本は池波正太郎さんの書生をつとめていた著者が、生前にご贔屓にしていた食べ物屋を巡ったエッセイです。
たとえば、 先生は、たとえ一杯のラーメンであっても死ぬ気で食べていた―。 と、抜粋ですが、美食家じゃなくて単に、『食べるのに一生懸命な人』であり、押し付けがましくないすらっと読める一冊です。よかったらどうぞ。 ![]() 奥さんに死後、『あの人は私に材料だけ用意させて、自分で料理していたけど、腕は今ひとつでした』云々と書かれてしまった。茶目っ気のあるエピソードだよな。でも、きっとね、他の本の、『ちょくらい浮気はしてもいいもんだ』みたいな文章にやり返したんだとオレは思っている。 ちなみにオレの昼食は、 白米、ハンバーグ、卵焼き、コブの煮込み、佃煮、シジミのみそ汁、 と、実家にいたのそれなりでしたが、アパートに戻って、さきほど食べた早めの夕食は、 スーパーのサーモン丼、卵とツナのサンドイッチ、に加えて昨日から食べたかったペヤングのソースやきそば....、+野菜ジュースと、 寂しいですねw。 食事ぐらい楽しくしたいもんだな....、 ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-07 16:10
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秋も終わって寒い冬になりますね。
オレの財布はずいぶんと寒いです、はいw。 話題:Chevrolet Corvette 憧れをやっと手に入れました。18、19の頃に欲しくて、親の猛反対にあって買えなかった車です。 ![]() 届いてから一週間も見てもいなかった。忙しくてね。昨日やっと乗ったのだけど、お約束で、(内堀さんやっちゃいました)ウインカーを出したつもりでワイパーが動いたw。 公道に出たら、おっかなびっくりでエスティマにパッシングされるし。 夜は遠方の友達と出かけたのですが、車幅が180ぐらいあるのですが、カーブのたびに中央線からはみ出て、その人いわく、 『命のキケンを感じた。ジェットコースターより怖かった』 だそうですw。 男を売りにしてる細野さん、醜態さらさせてすんませんでした....orz。 で、これは、仙台のディーラーで買いました。KCCさん。ここのスタッフブログがものすごく面白いですよ。 ![]() 2回も足を運んだ。場違いな客。でも、楽しかったです。 ![]() 乗り込んですぐにスリーセブン!。いい予感....、しない?、する?、どっかな〜。 追記:小学生の時におもちゃのコルベットC3を買った。ゼンマイで動くやつ。車なんか興味なかったけどセンスがそれを選ばせたんだ。18歳の時に吉川晃司さんが、たぶん、コルベットC4/ZR-1を所有していると聞いて、興味がわいた。そして20年も過ぎてから、やっと、コルベットC5を手に入れた。もう、コルベットC6、6世代目が走りはじめて久しいけど、オレは思い出の中の憧れとやって行くよ。サーフは車検も保険も切れて実家に眠ってる。けど、またいつか乗り込む日まで、それまではこちらを大切にします。 この、アニキの素晴らしいノリっぷりを見てね↓↓↓。 ▲
by end_of_eternity
| 2010-11-07 14:04
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