Switched-On
2024-03-15T10:55:25+09:00
end_of_eternity
我的人生日常
Excite Blog
本日のσ(゚∀゚ )オレ/農作業/会社を退職する/その4
http://switched.exblog.jp/29965812/
2024-03-14T23:51:00+09:00
2024-03-15T10:55:25+09:00
2024-03-14T23:51:59+09:00
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未分類
朝の7時から待っていたが霜が降りたそうで、土が乾燥するまでは仕事にならず、母親の用事に付き合ってスーパー、母の友人宅、ご近所さんのところを巡る。その後で郵便局に所要。
お昼を食べて13:30にやっと農作業開始。両親とドタバタしながら楽しくやるが要領が悪い。準備が足りない。待ち時間、手持無沙汰になるのは作業効率が悪い。
と思っていても、なんだかんだ3時間ほどで作業を終えたのは3人の人手がいたからだろう。
他にも、オレが畑に出ているのが珍しいらしく、ご近所さんが入れ替わり2名ほど畑に雑談をしに来た。これも時間の無駄なんだが母親に言わせると、『近所付き合いが大事』だそうだ。
夜は酒を飲んでネトフリとアマゾンプライムで楽しく過ごす。また、週末には前の会社の友人が遊びに来る予定だし、他にも短大の頃の友人に連絡をとったりと、退職までの有給休暇を悠々自適にすごしています。
いきなり不安になったり、ヤフオクで不要な楽器を売ったら高く売れて浮かれたりと、心がふわふわしており落ち着くまではもう少しかかりそうです。
さてそれでは、癒しになるので、しばらく前に降った雪景色を載せておきます。
では、では、
【追記】
夜の楽しみはお酒。写真のレシピはネグローニだが、最近はスウィートベルモットをストレートで飲むことを覚えた。グラスは100均で十分。バカラはもったいなくて使えない、the貧乏性、笑笑!
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本日のσ(゚∀゚ )オレ/引っ越し/会社を退職する/その3
http://switched.exblog.jp/29951483/
2024-03-10T21:27:00+09:00
2024-03-12T01:48:36+09:00
2024-03-10T21:27:02+09:00
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未分類
平成22年から入居しておりました。
思いのほかモノが多かった。特に服。役員のころにどんどん太って服が入らなくなった。たぶん、正確に数えてはいませんが、アウターとボトムを合わせて約200着はあったと思う。インナーを入れたら数えきれない。着ていないどころか、買ったのも忘れていたTシャツもたくさん出てきた。それと、本、CD、酒。サーフボードと筋トレの道具にサンドバッグ。CDなんかは同じものが2つあった。
どんな生活をしていたのでしょうかね。
でも、思い出は少ない。
なんでか。思い出すと部屋にいることが少ないのです。料理もしないし、訪れた人もほとんどいません。前の会社の同僚が一泊して東京に帰ったぐらい。あとは、西田アニキが朝風呂を浴びて帰っていったぐらいの記憶しかありません。
ここを拠点に仕事で稼いで、生活をして、サーフィン、スノーボード、何回かだけどトレッキング、それと、車での旅。他は、駅から、あるいは車で、都内に行き週末はあそび惚ける。横浜、仙台、てきとうに遊びまくった。
気が付けば文無しもとのドン・キホーテ....、
でも、違うんです。遊び惚けるつもりになれば、あと、5年から15年ぐらいは、今の享楽の日々は続いたのです。しかしね、そんな日々は望んではいません。自分を律する、自分自身の生活に大いにメスを入れて患部を取り除き、本物の自分を取り戻したい。50歳を過ぎてもそんなことを想っています。いくつになっても間に合う。永遠の中二病。どっちなのかはこれからの行動次第。
だけど、今日も実家で母親の態度に怒ってしまった。
まだ、まだ、だな。オレは小さな人間だ。
了
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本日のσ(゚∀゚ )オレ/有給消化の日常/会社を退職する/その3
http://switched.exblog.jp/29935561/
2024-03-06T11:21:00+09:00
2024-03-06T21:53:46+09:00
2024-03-06T11:21:07+09:00
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未分類
おはようございます。
話題:本日のσ(゚∀゚ )オレ/有給消化の日常/会社を退職する/その3
何年かして思い出せるように書き残します。
月曜日:上司に退職の意思を告げる
火曜日:課長との面談
水曜日:昼間はお役所へ。免許申請。何もしない。兎に角不安に襲われる
木曜日:記憶なし(多分手続きで出張所)
金曜日:高校の友人に連絡。いっしょにご飯。会社の友人から連絡有
土曜日:部屋の片づけ
日曜日:部屋の片づけ
月曜日:部屋の片づけと各手続き 家賃滞納について調べる 1週間が過ぎたことを感じる
火曜日:部屋の片づけと各手続き 朝一で大家さんと家賃滞納について話し合う
そして本日に至る。
一日のおおまかなルーティンは、
【9:00】 起床
とりあえず朝風呂
【11:00】
朝食 やさい炒め 玉子焼き サラダ 蕎麦 うどんなど簡単なもの
その後はだらだらして何もしない。スマホをいじくる。
【12:30】
やっと部屋の片づけを開始する。
約5日で完了予定。でも今のペースでは怪しい。
その他にも会社やその他の事務的な処理に努める。
食材の買い出しなど。空いた時間で昼食。
【18:00】
荷物を持って実家。晩御飯。部屋でネトフリやアマゾンプライムを見る。
【23:00】
アパートに戻る。風呂に入る。
【2:00】 就寝
こんな感じです。
でも、気づくと、作詞をしたり、ブログを書いている自分がいる。
つまり、オレは創作活動がしたくてたまらなかったのだ。
しかし、創作活動には時間とお金がかかる。
頑張っぺ!
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本日のσ(゚∀゚ )オレ/恐怖の家賃滞納/会社を退職する/その2
http://switched.exblog.jp/29932061/
2024-03-05T14:35:00+09:00
2024-03-06T21:28:37+09:00
2024-03-05T14:35:03+09:00
end_of_eternity
未分類
特に味覚が変わりました。スーパーで買ったカキフライ弁当と焼きそばを一口食べて捨てようかと思った。薬の味がする(;´・ω・)かわりに自分で作る料理と実家で食べる母親のご飯が抜群に美味しい。
たっぷり寝て、たっぷり食べています!
おはようございます。
話題:本日のσ(゚∀゚ )オレ/恐怖の家賃滞納/会社を退職する/その2
タイトル通り家賃滞納で大家さん(おばあちゃん)との長期戦がありました。
さかのぼること2年前ぐらいに大家さんから一報があり、
大家さん 『あなた、家賃を滞納しているわよ』
σ(゚∀゚ )オレ 『どれぐらいですか』
大家さん 『〇〇ヵ月』
σ(゚∀゚ )オレ 『いくらぐらいになります』
大家さん 『66万5,000円』
言葉を失いましたよ。
σ(゚∀゚ )オレ 『必ず払いますが、額面が大きいので確認をさせて下さい』
アパートに保管してある振込の控えを確認すると、言われた通り、その年の1月から5月までを払い忘れていたので、すぐに5ヶ月分を振り込みました。しかし、それ以前となると調べるのも大変です。銀行のホームページから当時の明細を取り寄せましたが細かすぎて追いかけきれません。
そうこうしているうちに大家さんからまた電話があり、
大家さん 『あなた、払うと言ってどうなったの』
σ(゚∀゚ )オレ 『記録が古すぎて確認が出来ません』
大家さん 『じゃあこっちの記録を送りますね』
通帳のコピーが送られてきたが、他人の通帳を見せられてもなにやらさっぱり。仕事も殺人的に忙しかったので放置、そうこうしているうちに交代勤務になったので更に放置してしまった。
ここまでは自分も悪いと思う。
やがて、今年の1月に大家から手紙が来た。内容は、『ボーナスが出たら払うとのことですが、どうなりましたか』と、お金の催促だが、額が額だけに恐怖を感じた。
だが、退職によりアパートを引き払うにあたり、清算が必要になった。
いよいよ本腰を入れて探して、様々な支払いの控えを確認する。
あるものだけでも、確認すると、大家さんが送って来た明細と、合わない????、それも、大幅に。
電話でその旨を伝えると、大家さんは慌てて電話を息子に変わろうとする。しかし、オレは食い下がった。しかし、大家さんは強引に息子に変わった。
息子さん 『こっちは税理士を入れているので間違いはありません』
σ(゚∀゚ )オレ 『でも、こちらの振込の控えと照し合せると違っています』
息子さん 『あなたも〇〇年そこに入っていますよね』
σ(゚∀゚ )オレ 『いや、そもそもが、そちらから送られた支払いの記録が間違ってます』
息子さん 『いくらなら払えるのですか?』
σ(゚∀゚ )オレ 『こっちの記録だと10万5,000円ですよ』
息子さん 『怒ってませんが、それでいいですよ!』
何が起こったんだ????。こっちは納得が行っていないが、取り合えず引き下がった。
しかし、会話のなかで、家賃は5年過ぎると時効になる話もした。
これは予想だけど、大家さんは管理がずさんな人で、たぶん、入居以来の払い忘れに気づいて、それをこの5年以内の払い忘れにしたような記録を送り付けて、回収しようとしたのだと思う。
自分は入居して2年目ぐらいのときに、やはり払い忘れを不動産屋経由で言われて、それ以降は気を付けてATMの振込控えを保管していた。
もっと早く動けば良かった。
けっかとして、払わずに済んだ38万5,000円の差額はなんだったのか、
大家さんの意図はなんだったのか。
考えると恐ろしい話でした。
了
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本日のσ(゚∀゚ )オレ/会社を退職する
http://switched.exblog.jp/29929295/
2024-03-04T12:15:00+09:00
2024-03-05T09:14:02+09:00
2024-03-04T12:15:35+09:00
end_of_eternity
未分類
会社を退職することにしました。
やりつくした ⇔ 不完全燃焼
逃げる ⇔ 新しい旅立ち
上記したように色々なことが頭の中をかけ巡って考えがまとまりません。
退職を告げてから二日目の夜、恐ろしく落ち込みました。課長に退職を告げた瞬間が夢に出てきて、不安から夢と現実がわからなくなった。四日経ち、今でも不安ではありますが、少しやる気も出てきました。
でも、退職は、考え抜いた末なんです。
このまま会社にいたら、まず、創作活動、音楽であり、文章であり、出来ないまま一生を終えてしまう。それと身体の事。いっときは持病が悪化して、今はかなり戻りましたが体重も大幅にふえました。
つぎに、両親のこと、高齢化で体力の衰えた二人を放ってはおけない。
でもね、人の為と書いて、『偽』です。けっきょくは自分が弱かった。がむしゃらになってしがみつく気になれなくなった。会社について行けないと感じたのは大きかった。
独身、年収850万、家を2件所有、車を4台所有、アパート暮らし。無駄に持っている衣食住。日々外食、買い物は値札も見ない。週末は酒池肉林。享楽を貪る。
貯蓄もせずに好き放題にやっていました。
爛れた生活と別れて清貧な生活を目指します。しかし、人はパンと水のみでは生きれない。わたしは聖人君子ではないので、もう一度お金を集める、その手段を考える前の一時として、いまは充電期間として、日々を過ごしています。
了
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STUDIO SSI Mk‐Ⅳ & リスニングルーム
http://switched.exblog.jp/29926267/
2024-03-02T23:44:00+09:00
2024-03-06T01:36:40+09:00
2024-03-02T23:44:39+09:00
end_of_eternity
未分類
おはようございます。
話題:STUDIO SSI Mk‐Ⅳ & リスニングルーム
音楽スタジオとリスニングルームがほぼ出来上がった。楽しみだ。
リスニングルームについては前回の記事をご参照下さい。ここにオットマン付きの椅子を置きます。あとはプロジェクターを設置するか悩み中です。]]>
思い出のスピーカー/Victor SX-700
http://switched.exblog.jp/29876665/
2024-02-14T22:53:00+09:00
2024-03-04T19:14:29+09:00
2024-02-14T22:54:24+09:00
end_of_eternity
未分類
お正月に不用品を処分しにハードオフに行って、逆に無駄な買い物をしてきました。
おはようございます。
話題:思い出のスピーカー/Victor SX-700
外側にある大きなスピーカーがVictor SX-700です。
高校生のときに婆ちゃんにわがままを言って買ってもらったものなので、どうしても復活させたく、部品取り目的で同じものをヤフオクで購入したら、すでに修理目的のオリジナルが保管状態が悪く湿気でボロボロ。けっきょくは部品取り目的の再購入品の壊れていたツイーターユニットを、ヤフオクで取り外したパーツをみつけて交換修理しました。
早い話が、思い出のスピーカーは直らず、部品取り目的の再購入品を更に修理すると言った、なんちゃらの船状態www
でも、そうまでして復活させたかったのは、若かりし頃の思い出にひたりたかったからですが、これまた若かりし頃に購入したKENWOODのアンプKA-V7000で鳴らそうとしたところ音が出ない。内部をエアクリーナーで掃除をしたが左側が接触不良。
あきらめて不要の長物となった思い出のスピーカーとアンプとついでにLDプレイヤーをハードオフで処分。そしたら、ジャンク品コーナーに良さそうなオーディオの中古品がたくさん置いてある。
なので、さっそく色々と物色して、組み合わせました。
アンプ:YAMAHA AX2600スピーカーA:Victor SX-700スピーカーB:DENON SC‐555SAスーパーウーハー:ONKYO SL-407
けっきょくどうなったかというと、適当に選んだYAMAHAのアンプがけっこういい仕事してくれるのと、たまたま追加したDENON のスピーカーがほどよく中音域が得意なやつだったのと、これまた適当に買ったONKYOのスーパーウーハーが地味に低音域をブーストしてくれている。高音域と低音域がはっきりしたスピーカーに中音域が得意なスピーカーを組み合わせ、更に重低音用にスーパーウーハーを追加。それらを楽器メーカーが作った繊細で澄んだ音がするアンプで鳴らすセッティングとなった。
試しに、角松敏生、Cocco、Superflyと聞いてみたら、伴奏もボーカルもよく聴こえ、なおかつほど良く低音が効いているセットになりました。
もっと、お金をかけたいですが、15,000円ほどの追加で楽しみが増えたのは良かったと思う。
そして、高校生の頃に選んだスピーカーで、50歳を過ぎた今でも、大好きな音楽が楽しめるのは、最高の贅沢だと思った。]]>
人生の分岐点
http://switched.exblog.jp/29826420/
2024-01-22T02:14:00+09:00
2024-01-24T08:20:07+09:00
2024-01-22T02:14:57+09:00
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未分類
おはようございます。
話題:人生の分岐点
タイトルの通り、人生の分岐点で立っていて、ぶっちゃけ退職を考えています。
もう、何年も前から考えていたけど、深く考えるきっかけはコロナ感染で10日間の自粛生活をしていたときに見た、ユーチューブでした。
山奥暮らし。小屋暮らし。田舎暮らし。山奥ニート。田舎で0円生活。中年の独身者の暮らし。他にも、堀江貴文さんの本、芸人のヒロシさんの本。それらもろもろから、お金と時間の両方を手に入れるのは、難しいと云うことを悟った。
決め手になったのは、労組の役員を退任したことです。
残ってくれと言われたが、すでに次期委員長と副委員長には愛想を尽かしていたので続投は考えなかった。器が足りない。それは本部と残留者の全員に言えた。半分以上が入れ替わるような組織は、おそらくもうダメだろう。
私は、部下に、もとの職場に戻りやすいように便宜を図った。
そして、自分はまた犠牲になっている。後任者はあまりにも適当な人選で、それは、私の置き土産の一つだが、自分と、優秀な部下、それと、優秀な人間がほとんどが辞めたかわりに、お荷物を押し付けた。つまらん最後の仕返しだ。
くだらない話は、忘備録としてここまでにし、では、未来の話。
来月までは何も変えずに出社する。そして、最後の週に退社を告げて、再来月は引っ越しと、それ以降の手続きをする。
2月に辞表。3月は有給消化で次の準備期間にする。
考えているのは、農業後継者になること。それと、35歳のときに断念した、司法書士の資格に再チャレンジしたい。
他にも、やりたいことは、
①キャンピングカーで北海道を一周しながら時々スノーボード②キャンピングカーでサーフトリップしながら山陰を中心に旅をする③ヨーロッパを一人旅④新潟からウラジオストクにわたって鉄道でモスクワを目指す⑤ニューヨークに行ってみる⑥上海に住む⑦台湾に住む⑧ウユニ塩湖に行く
でもね、
まずは得た時間でロンドンに行きたい。それとウィーン。コロナで延期してたけど、映画、『恋人までの距離』のロケ地巡りをしたい。
それと、並行して、もっと作曲をして、書きかけの小説も完成させる。どこまでやれるかな。まだ未発表だけど、25歳の頃から書いている小説を完結させたい。ずっと中断している。
生きているのは辛いし、たいへん。でも、可能性を捨てたらつまらない。
年収は最高で850万ぐらい。でも、今の会社で働くのは無駄だ。嫌だ。何の進歩も進展も無い。もう自分がやる仕事じゃない。だってそうじゃん。昔のブログ記事を読み返せば簡単だ。『お金』だけで選んだから。良い暮らしをさせてもらったのは感謝するが、今の私に必要なのは、『お金』じゃなくて、生活を根本から見直すための、『時間』なんだ。
何年かして、この判断に対しても、アンサーが出るだろう。
了
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無題
http://switched.exblog.jp/29779283/
2023-12-11T22:46:00+09:00
2023-12-28T18:13:53+09:00
2023-12-11T22:46:39+09:00
end_of_eternity
未分類
私は思う私たち人は塵芥から生まれ肉体を得るとともに思考を始め青き瑞々しい春の時代をへて精神を育むその赤き炎のように燃えさかる命は夏の萌ゆる木々の波濤のごとく四方八方に手足を伸ばし留まることを知らず成長をしていくやがて成熟した心と体は小雨の降る白い秋の大気のように情熱を内に秘めつつ冷静を装い漠然ととらえどころが無くしかしながら大海の波に抗う巌のごとく確かな力強さに満ち溢れ坦々と粛々と黒き雪の降る冬の一日の終わりへと向かう人は塵芥から生まれて人は塵芥へと帰っていくそしてそれが人生であったのだと私は思う
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本日のσ(゚∀゚ )オレ in 仙台
http://switched.exblog.jp/29775176/
2023-12-10T11:54:00+09:00
2023-12-12T23:07:50+09:00
2023-12-10T11:54:46+09:00
end_of_eternity
未分類
おはようございます。
話題:本日のσ(゚∀゚ )オレ in 仙台
久々に近状を書きますが、色々と疲れています。
そして、同級生曰く、『精神的に疲れると、なんとなくみんな仙台に行くよな』と、土地柄から東京以外で行きやすい大都市として仙台の名前があがりますが、例に漏れず自分も疲れると東北に旅に出ます。
着いたら先ずは中庭のあるカフェでゆっくり。本を読みながら。だいたい何処でも1時間前後で飽きてドトールやコンビニのイートイン、それと『仙台メディアテーク 図書館』などをうろうろします。なにしろ安い。そして食事は、『そばの神田』。牛タンはよほどお金に余裕がある時にだけ。と言うか、食べ飽きた。
気に入っているのはスイーツ。カズノリイケダの燻製モンブランはかなり美味しかった。ここはテイクアウトはせずに店内で食べることにしています。店員さんのおススメのままに選ぶとハズレはないけど、2000円ぐらいは食べちゃう。でも、これが一番の贅沢と思う。他にはキルフェボン。
そして、日が暮れたら、イルミネーション。
仙台の人はページェントって言うけどね。
その後は気に入っている焼き鳥屋が3件ほどあるのですが、そこの何処かでネットフリックスを見ながらお酒を楽しんで、気が向いたら餃子屋、bar、と梯子をしてからビジホでゆっくりと寝ます。
で、朝一で帰ると。
そして唐突ですが、近状報告として、そろそろ会社を辞めようかと準備をしています。
何年か過ぎてこの文章を読んだ自分がどう思うかが気になりますが、退くも進むも同じ後悔するなら、進みましょう。
〆
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狸穴で雨/短編/蒼龍苦界
http://switched.exblog.jp/29739973/
2023-11-08T08:43:00+09:00
2024-03-15T08:46:20+09:00
2023-11-08T08:43:02+09:00
end_of_eternity
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狸 穴 で 雨
東京都港区麻布のロシア大使館の西側から南に下がる坂を、『狸穴坂/まみあなざか』といい、その坂を下った所にあるのが、『狸穴公園』。名前の由来ははっきりとはしないが、江戸時代に悪さをして回った狸の住む穴が、坂の下あったからだとも言われている。 マンションの植え込みにそって若い女が歩く。 琴乃だ。 麻布にあるカメラマンの個人スタジオで、週刊誌グラビアの撮影に時間がかかり終電間近になった。厳密には、カメラマンが琴乃の身体を目当てに、終電間際に設定した仕事のお陰で意図的にこうなった。 適当にあしらって逃げたが。 性欲が強いヤツが成功すると業界人たちは言う。よくよく考えれば、芸能界は各事務所社長の性癖のアピールで作られているのではないだろうか。若い女だけを集める事務所。巨乳の女だけを集める事務所。可愛い男の子だけを集める事務所。 自分は、脱ぐ女だけを集める事務所に所属していて、自分の裸で自慰にふける男がいる。 仕事についてはあまり考えないようにしている。考え込んだら終わりだ。脱げばお金になる。気軽に始めた仕事だが、思いつめて心を病んだ知り合いもいる。 理由は、『親ばれ』、『彼氏ばれ』などの、秘密が知れてしまった場合。 琴乃もとっくにばれている。公務員の姉が泣叫んだがやめる気は無い。 実家は千歳烏山で、父親は大手広告代理店の支店長を務めているが、週末にパチンコを打ちに行くのを息抜きにしており、母親も何処にでもいるような、ごくごく平凡な女だ。バレてからは、家族で母親だけは理解を示してくれたが、姉はずっと口もきいてくれないし、父親とも気まずいので自然と実家に帰らなくなった。東京女子大の近くにある高校を出てから、新宿の服飾デザインの学校に通ったが、途中で辞めてしまった。 理由はホスト遊び。 パーティのような日々に憧れてキャバクラの仕事をはじめ、歌舞伎町のホストクラブに通うようになり、レディースローンで借金をした。『ジャンプ』と言われても、借りた20万が一月で150万になった理由は未だに理解出来ない。 返せなくなり風俗へ。世間知らずの女の子のお決まりのパターン。 今の仕事にたどり着いた。 ただ、琴乃が他の女の子達と違ったのは、金に対する執着が芽生えた事である。 たいがいが浪費僻で金を費やしてしまうのに対して、琴乃はストイックになり貯蓄にひたすら勤めた。目的は無いが通帳を見るのが楽しみになっていたのだ。 4年間で溜めた金は都心にマンションを買ってもまだ余っている。 雨が降ってきた。 傘が無い。 琴乃は小走りに坂を降りたが、雨脚は急に強まり、仕方なくオフィスビルの入口に身をよせる。 気がつくと路の反対に灯りが見えた。 Carlsbergの蛍光看板の下にBerとロゴが入っている。 咽が渇いていたので雨宿りを言い訳に寄ることにした。 重いドアを開けると薄暗い店内には静かにブルースが流れる。ロバート・ジョンソン。女に毒殺されたブルースマンの、『グレイハウンドのブルース』。カウンターに座ってビールを頼むと、ピルスナーにそそがれた金色の液体を飲んだ。体型も管理しなくてはならない。撮影の前は食事制限もするしアルコールも控えるが仕事の後は特別だ。 一息つくと煙草に火を着ける。 他に客はいない。長髪を束ねた中年のマスターが、カウンターの下に隠したウイスキーを少しずつ飲みながら奥にあるテレビを見ている。 ナッツを摘む。 雨は止みそうにない。 車で来ればよかった。終電を逃したらタクシーしかない。学生の頃に渋谷から新宿まで歩いたら3時間かかった。此所から曙橋まで歩くと明日の朝だ。 お金が無い訳ではない。だが、使いたくない。 元々物欲も乏しい。 借金はとっくに返し切り目的も消えたが、抜けられなくなったとでも言うべきか、だら、だら、続いてしまっている。 違う。充実しているのだ。仕事が自分に合っている。 雨はさらに強まった。 『やっぱり、タクシーかな』 独白した。 マスターが気をきかせて呼ぶかどうか尋ねたが、飲み足りなかったのでビールを注文する。 最近になって風間が知り合い伝手で手に入れた、レース用のチューニングを施した大型バイクを林和季に与えた。和季を迎えに来させたい。何故あの年下が気になるのか。 それは単に、 ー自分になびかない....、 から。 哀しくはない。ただ、気にもならない男は大勢寄って来るのに、気に入った男に興味を持たれない、それどころか、自分に興味を持たない若い男がいること自体が嫌だ。 華やかな世界でもてはやされ、昨年琴乃が表紙を飾った雑誌は10を超える。 でも胸には、ぽっかりと、穴が空いているように虚しかった。 仕事でもしょっちゅう口説かれるし、雷島が自分に気があるのも知っている。しかし、その雷島も、自分から言い寄ったらたぶん逃げると思ってしまう。けっきょく、自分は、自分に自信が無いのだ。相手に飛び込む事も、相手を受け入れる事も恐れている。 とどのつまり、藤老人が指摘するには、 ーあんたは他人を信用しない....、 だそうだ。 容姿を磨いて、視線を集めて満足しているのは、恐れの裏返し。 25歳になる。 若いとは言えないし、業界でも飽きられている頃だし、今さらまっとうな仕事に就けるとも思えない。 実家にも戻れない。 複数ある預金通帳も最近は見ていない。欲しかったマンションも外車も手に入れた途端に興味が無くなった。 ブランド品、海外旅行、格闘技観戦、ライブ、コンサート....、 何にも興味が持てない。 あれ程好きだったホスト通いも。 だいだいにおいて自分は、この年令になってもまともな恋愛をした経験が無いのである。誕生日を祝ってもらった事も、クリスマスを彼氏と一緒に過ごした事もなかった。 高校の頃は友達の影響でパンクにハマり、経堂のクラブで疲れて動けなくなるまではしゃいだ。髪の毛にカラフルなエクステンションをしていたのが奇異に映り、クラスメイトからは遠ざけられた。 繰り返しになるが、歌舞伎町で声を掛けられたホストに連れられ、夢見心地で通いつめたホストクラブで借金をつくり、そいつが悪いホストとも知らずに闇金を紹介され、最後は、『女なら風俗で稼げばいいだろう』と言われて、意地になって面接に行った。 当てつけだ。子供だった。初出勤の前夜は、それはそれは大泣きに泣いた。 後は仕事と割り切って歌舞伎町の風俗ビルの、パーテーションで仕切られた狭い部屋に閉じこもり、入れ代わり来る男達の欲望を満たしてやった。若くはつらつとしていた琴乃はすぐに人気がついた。けっこう楽しかった。藤老人から、江戸時代の吉原を、『苦界/くがい』と呼び、男が通う極楽の路と女が売られる地獄の路と言っていたが、女達も意外に楽しんでいたのではないかと思う。 むろん若い女だけだろうが。では、歌舞伎町も、『苦界』なのだろうか。 時々ふと、 ーこの世から消えたい....、 などと思う。 さんざん面白可笑しくやってきたが、若さに陰りが見えた頃から、そう考えるようになった。 憂鬱なのは雨のせいか。 ドアが開いて客が来た。白髪混じりの男。中年よりも初老に近いかもしれない。若作りのダブルのスーツにストライプのシャツと太いネクタイ。仕立ても良くて、映画、『ウォール街』で見たマイケル・ダグラスのよう。 ダンディだ。 男は白ワインの炭酸割りを頼むと飲まずにマスターと話し始めた。常連らしい。聞き耳をたてると地方の実業家だと分かった。学生の頃に東京に住んでいてマスターとは古い付き合いらしい。 ほろ酔いの琴乃が話し掛けてみると、四十代後半の肩幅の広いその男は、ニコッと笑った。 似てる。 面影が誰かに。 それとなく話がはずみ、海外旅行の話題が豊富である琴乃に、 『あなたは何屋さんなの?』 と男が戯けて尋ねる。『何屋さん』とのフレーズに吹き出しそうになった。初対面の相手に職業を尋ねるのは失礼だが、この聞き方ならばそうも聞こえない。 間抜けに聞こえてもスマート。 琴乃は、 『モデルです』 と答えた。 『納得したよ。オレの田舎にはあなたみたいな娘さんはいないね。ほっぺたの赤い女の子ばっかり』 『冗談ばっかり』 『ホントだよ。独身なんだ。東京へは彼女を見つけに来てるんだ』 『おいくつなんですか?』 『ないしょ。マスター、彼女に何か、飲み物』 『じゃあ、お言葉に甘えて、モスコ』 ライムの角をとって搾ってから中に落とす。 ジンジャーイェール、『生姜の叫び』とはこれまたすごいネーミングだが、そこにウオッカとライムシロップを加える。 琴乃はロングカクテルでゆっくりと話しを聞いてみようと考えた。 仕事はプラントがどうのこうのと素人には解らない内容だったが、それ以外の、某大手光学レンズ会社の社長と友達になって、蒲田にあるビルの隠しエレベーターで社長室にお邪魔した事があるとか、あの有名なIT社長が権勢華やかなりし頃にいっしょに食事した事があるとかと、細部にわたりリアルなので作り話では無いと気づく。 逆に琴乃が、『あなたは、何屋さんなんですか?』と尋ねる。 『プラントってのは砂利とかセメントの事だよ。建設関係の仕事。今は再開発ラッシュだから東京にもよく足を運ぶようになった。地方は相変わらず貧乏だけど、東京はずっと発展してる。狭くて住みにくいだろうね。静岡にでも首都を遷さないとダメだと思う。けど、儲かってりゃいいや』 難しい話も締めくくりで戯けてみせれば相手を和ませる。 『遊び人なんだ』 男は、『遊び人じゃないよ』と軽く切り返す。これがまた絶妙で、タイミング、声色とともに引き込まれる。 言葉巧みとは心地良いテンポとリズムで話せる事。 余談だが、演説の天才アドルフ・ヒットラーと、ミュージシャンのジョン・レノンの話し方を比べると、ドイツ語と英語だが、句切りや呼吸のタイミングが似ているそうだ。人を話に引き込むには、会話にテンポとリズムを持たせる。そして、いっしゅんの間も重要だ。 この紳士が入って来るまでにビールもけっこう飲んだ。琴乃はしだいに高揚していった。『ヤバい』。襟の内で呟く。このままでは眼前の紳士に抱き着いて痴態を晒してしまう。酒癖もそうとうに悪い。 柔和な笑顔で紳士の話は続く。脂気の無い張り付いたような青白い肌と白髪のまじった髪。顔の作りは端正だが冷たくはない。 カルバンクラインの香水の匂い。時計はグランドセイコー。本物の金持ちは機能を優先するものだ。金無垢のロレックスなど成り金の見栄でしかない。 男はショートカクテルを頼んだ。アースクエイク。かなり度数が高い。 『同じものを』 物珍しかったので琴乃もつられた。アブサン、ウィスキー、ドライジンをシェークしたカクテルをショートで飲むのだから、飲み口はいいが、酔う。シェイカーが曲者なのだ。バーテンダーの手の中で、酒に空気が練りこまれると、味がまろやかになってついつい飲んでしまう。女たらしがターゲットを口説くのにbarを使う理由だ。バーテンダーと客がぐるの場合もある。 琴乃は飲みなれない酒に意識が遠のいた。撮影中の緊張が尾を引いていたのと、前記したが撮影前には食事も節制するので、強烈なアルコールがすきっ腹に効いてしまった。 アースクエイクは直訳そのまま、『地震』を意味する。カクテルの名前のままに、あたまがぐらぐらと揺れ、大きく息を吐いて、かなり機嫌の良い顔を作る。琴乃は静かにバーカウンターに突っ伏した。
翌日、琴乃は、曙橋にある自宅マンションの玄関で、着の身着のまま、昼まで寝ていた。
覚えているのは、マスターと紳士に付き添われてタクシーに乗せられたところまで。吐いてはいないが、そうとうに酔った。意識はあったが、そうとうにだ。 冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。 頭痛がおさまらない。ハンドバックの中身、財布、腕時計を確認する。みんな無事だ。スマートフォンの画面を見ると楽天のアプリのお知らせがトップにあった。Lineにしても、Twitterにしても、興味の無い通知しか来ていない。アドレスには500件ぐらいの電話番号が登録されているが誰からもかかっては来ない。今日はオフなので仕事の電話も鳴らない。代わりに、不意に、腹が鳴る。酒飲みならわかるだろうが、人にもよるが、飲みすぎると、腹がゆるくなる。トイレで自己嫌悪におちいる。洗面台で手を洗い、化粧を落とすと、先ずはアルコールを抜きたいので、歩いて行けるスーパー銭湯に向かった。平日の昼間なので人はまばらだ。サウナと水風呂に繰り返しで3回入ると頭痛は消えた。体重計にのるが変化は無い。販売機でフルーツ牛乳を買う。洗面台の鏡を見ると、二日酔いの酷い顔をした女は消えて、瑞々しさを取り戻したすっぴんの琴乃がいた。急に機嫌が良くなる。帰りにコンビニでおにぎりとシジミのインスタント味噌汁を買う。シジミに含まれるオルチニンと云う成分が二日酔いに良いらしい。マンションの部屋に戻りインスタント味噌汁にお湯を注いでおにぎりを頬張る。そこでやっと、アルコールが完全に抜けて、鮮明になった脳みそが違和感に気づく。財布の中身は常に2万円。減ってはいない。琴乃は現金をほとんど持ち歩かない。カードかスマホの電子決済だ。それでは、昨夜のタクシーは、どうやって乗ったのだろうか。そも、そも、酒代はどうしたのか。『ヤバい』呟いた。一見の店に入って、見知らぬ紳士か、barのマスターに支払いを吹っ掛け、その上にタクシー代まで出させたのではないだろうか。琴乃は妙に律儀な一面がある。明日と明後日は、ある人気ユーチューバーの企画に呼ばれて終日撮影になるので、今日のうちに確認をして、お金を借りてしまったなら返してしまおうと思ったが、barの店名が分からない。港区、狸穴坂で、barを検索したが、それらしい店は見つからない。電話確認が出来ない。思い出す。カウンター6席とテーブルが二つの小さなbarだった。ほとんどの店が仕込みを終えるのが夜の7時ぐらいだと思う。時計は午後5時だ。タイミングとしては丁度良い。車検から戻ったばかりのBMWで港区に向かい、車を降りて狸穴坂の周辺を探す。だが、それらしい店は見当たらなかった。30分ほど坂の下周辺を右往左往したが、不審者とでも思われたのか、帰宅途中のサラリーマン風のカップルにまじまじと見られたので探すのをあきらめる。確かに、坂を下りたところにCarlsbergの蛍光看板が見えて、barがあった。しかしそれらしい建物は無い。真夜中で、雨が降っていたにしても、琴乃の視力がそれほど良い方ではないにしても、東京都の港区の麻布で、狸に、化かされたような話だ。あきらめて、曙橋のマンションに戻り、車を置いて都営バスに乗り風人車の事務所に向かう。誰かと話したかった。バスを降りて歩くと、頭上には、積み重なり、折り重なる、蛍光看板。路上には、人々が、所せましと歩く。歌舞伎町の喧騒の中に紛れると落ち着く。スーツ姿のサラリーマンと着飾った若い女たち、それに群がるキャッチ、ホスト。サリーを纏った中近東の女性たちとすれ違う。ムスリムは何処にいても自分たちの戒律を守る。歩いている半分は外国人だ。少し前は中国人の観光客が目立ったが、最近は以前よりも複雑化しており、中国人や韓国人、東南アジアの人たちが減ったぶん、中近東の人たちが多い気がする。錦糸町から流れてきたナイジェリア人たちが目立ち、彼らによるぼったくり、睡眠薬を使った昏睡強盗がまた流行っているらしい。注意していれば見極められるのだが、そのスリルも歌舞伎町の醍醐味だ。人込みのなかから大きな男が手を振る。白いスーツの襟元に薔薇の刺繍が入っている。ホストクラブ、『グラスムーン』のホスト、加藤重文が、キャッチと称して路上で怠けている。それでも、それなりの売り上げを持っているので文句は言われない。『琴乃さん。元気っすか』満面の笑みだ。昨夜の出来事を話すと、『そのお金は貰っておいてもいいんじゃないですか。琴乃さんみたいな、綺麗な人と楽しいお話が出来たんだから、その紳士もマスターもラッキーですよ』琴乃は大笑いした。容姿を褒められるのは大好きだ。それにしても流石はホストだけあって気分を高揚させてくれるのが上手い。ポジティブになれる。自分にとってのホスト遊びはこれが大きかった。機嫌良く手を振ると加藤と別れた。人込みをかき分けて進むと、昔からある歌舞伎町のペットショップの前で、立ち止まっているブロンドが目についた。逃亡者。ヴィオ・ウェゲナー。藤老人の人付き合いは戦後までさかのぼるので幅広く、混沌とした時代からの名残で今でも政財界に大きなパイプがあり、お互いに多くの秘密を共有しあって、持ちつ持たれつの関係を続けている。どのような経緯かは聞けないが、頼まれて風人車で身柄を匿ったのをきっかけに、若頭の風間と知り合い、風間を頼ってこの街に居ついた。笑顔で猫を見ているので話しかけはしなかった。―猫、好きなんだ….、ゆっくりと、その場を離れようと、正面に向き直る。すると今度は、すぐ目の前の蕎麦屋の暖簾をくぐって、先ほどの加藤よりも更に大きな男が姿を見せた。何かにつけては風人車にちょっかいをかけて来る北一輝の組にいる大男。左右の目の色が違うのでこの界隈でもかなり目立つ。梓京介だ。なんでも和季に腹を刺されて平気だったと聞いたが、それは信じてはいない。見間違いなのだ。それで生きている人間などいない。大久保のほうに向かって姿を消して行った。路地に入り、ラブホテルの向かいにある風人車が所有するビルのエレベーターを上がり、それっぽい社名の書かれたドアを開けて事務所に入る。風人車は、浅草に本家を持つ老舗のヤクザで、名前の由来は明治・大正の時代に浅草で人力車を引く車夫をまとめていた頃の名残である。とは言っても、時代の流れと、暴対法の影響で組は縮小し、今では新宿にある藤庄吉の運営する枝の組の収益が一番太い。事務所に、金看板は無いし、出入りする男たちもスーツ姿で、一見すると何をしているかはわからないが、少なくとも反社のフロント企業には見えない。窓際のデスクには誰も座っていない。風間の席だ。司法試験を突破した頭脳で組を切り盛りするやり手の若頭。向き合ったデスクで数人の男がパソコンのキーを叩いている。奥のソファに座った40絡みの男が、『琴乃さん。お疲れ様です。若頭と、雷島のアニキは、客が来て隣の部屋にいます』と言った。ここで琴乃は思った。これだ。自分が求めているのは、尊称で呼ばれて、敬語で話しかけられ、ちやほやされたいのだ。ー承認欲求を満たされたい….、だけなのだ。奥の部屋のドアが不意に開いて、中からは、風間と雷島、それと何故か、林和季を田舎から連れ戻しに来てそのまま居ついてしまった南太郎が姿を現す。背が低く、30歳にして中学生の容貌を持つ南太郎は、分厚い眼鏡と薄汚れたシャツに加えて、仕事をするときに必ず腕カバーをする。風人車の事務所に寝泊まりして雑用をこなし、時々大久保のマンションヘルスに通うことに生きがいを見出した、琴乃がいちばんお近づきになりたくないタイプの男だ。最後に、仕立ての良いスーツ姿の男が出てきた時に、琴乃は、ハッとした。昨夜、狸穴坂のbarで出会った紳士であった。『マイケル….、ダグラス….、』紳士は最初気づかなかったが、『あれっ、barにいたモデルさん』風間はポカンとした。『モデルさん。お前が。間違いではないけど、盛ってねえか』『風間さん、静かにしてね』風間は、『やかましい』と返されると思ったので呆気に取られる。何と云う巡り合わせだろうか。紳士の正体は、南太郎に林和季を連れ戻すように指示をしたその人であり、建設業を中心にした林家の事業を運営する実業家であり、莫大な林家の資産を管理し、林和季の後見人で叔父である林睦夫であった。30分刻みのスケジュールの中でやっと新宿に来てアポイントメントを取り風間に会うことが出来たが、当の和樹は藤老人と泊まり込みで石川県金沢市まで出かけており入れ違いになってしまった。面影が誰かに似ていると思ったのは林和季にだ。血縁なのだから当然である。林睦夫は、和季は大事な跡取りなので実家に戻るように伝えて欲しいとだけ言い、琴乃にウィンクをすると去った。風間とは話しているうちに意気投合したようだ。同じ大学を卒業していた。風間の説得で、当人の意思を尊重するとの事で話もついたそうだ。風間は近くにヴィオを待たせており、これから西新宿のマンションに帰ると言うので、琴乃もいっしょに表に出た。表に出ると人が多い。狭いビルの路地がよりいっそうにそれを際立たせる。父親が大学時代にワンダーフォーゲル部に入って山登りを趣味にしていたそうだが、当時は、東北に行くと地元の人が未だに、『狐や狸が人を化かす』との迷信を信じていたそうだ。狐狸に化かされる。母親が買ってくれた絵本の、『ごんぎつね』を思い出す。都会の街中に出る狐狸の類は、人間に他ならない。そこに来て、この街には、外国からの正体不明の狐狸までが多く闊歩する。だが、あの紳士と偶然にも会えたと云うことは、狸穴坂の狸に化かされたのではなく、あのbarは実際にある。ネットで改めて調べると狸穴坂を下りたところにそれらしいbarはあった。麻布と云う土地柄から、芸能人やセレブリティがお忍びでも行けるように、取材などは避けてひっそりと営業をしていたため、名前すらなく、したがって検索のしようもなく、個人ブログに掲載された店内写真と記憶を照し合せて、やっと探し当てた。また、時間が無い時に何かを探してはいけないもので、翌日に琴乃がさ迷ったのは、目当ての『狸穴坂』ではなく、その一つ東にある、別の、『鼠坂』のほうだった。坂違いである。情報不足に加えて勘違いもしていたのだ。数日後、琴乃が再びCarlsbergの蛍光看板を見つけてberを訪れ、マスターに尋ねたところ、タクシー代を立て替えてくれたのはやはり林睦夫であった。マスターは林睦夫の人柄をよく知っており、お金は受け取らないだろうとのことなので、あの晩に店で飲んだ代金のみを支払う。店を出てから振り返り改めて思った。建物がならぶ合間に、重厚なオーク材のドアとシンプルな看板のみがあり、窓も無いし、この界隈にはよくあるのだが、意図的に入り口も分かりにくくしてある。帰り道で狸穴公園のベンチに腰掛けると林睦雄のことを思い出した。洒脱な遊び人。でも、中身もきちんと入っている人間。優しくて、気遣いが出来て、仕事が出来て、『わたしのマイケル・ダグラス、なんてね』呟くと、ため息が出た。何もかもが素敵だ。自分とは生きる世界が違いすぎる。でも予感があった。自分は必ずあの紳士と再会をするだろう。恋愛は自由であり障害が多いほど燃えるものだ。琴乃は、ふと気になってスマホを取り出し、狸穴坂の由来を調べたところ、はっきりとはしないが、江戸時代に狸の住む穴が坂の下あったからだとも言われており、大奥、江戸城の後宮で悪さをして回ったと記載があった。思うに、女に、『恋の悪戯』を仕掛ける狸だったのではないか。公園の生垣から顔をのぞかせる狸を想像して小さく笑った。その後もしばらくベンチに座り続け、あれや、これやと、物思いに耽ったところで、このエピソードは終わりとする。
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普賢菩薩/小説/蒼龍苦界
http://switched.exblog.jp/29733520/
2023-10-30T20:25:00+09:00
2023-12-10T11:52:42+09:00
2023-10-30T20:25:36+09:00
end_of_eternity
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普 賢 菩 薩
夕暮れ時。 歌舞伎町の路地を和季と雷島は小走りに急いだ。大久保のラブホテル街には黒いエルグランドが待機しており、藤庄吉が所有しているデリバリーヘルス、いわゆる派遣型風俗店、『エンジェルクラブ』の店長である瀧英美(たきひでみ)が渋面で、ドライバーの県義経(あがたよしつね)が不安げな顔で立っていた。東北のプロレス団体にいた頃の後輩でもある義経が、大きな体をゆすりながら、それこそ半分泣きそうな顔で先輩レスラーである雷島にすり寄った。『先輩、レイナさんが人質になってます』言い終えるか終えないかのタイミングで瀧が頭を叩く。『バカ野郎っ!頭のイカれた演歌歌手に閉じ込められてるだけじゃねえか』いきさつはこうである。エンジェルクラブのNo1であるレイナが、新規の客であった自称演歌歌手に呼ばれて部屋に入ったところ、本番行為、つまり性器への挿入を求められて拒み、店に連絡して引き上げようとしたが、入り口に立ち塞がりなおも食い下がって求めている。男は、―僕も売れて田舎の母に楽させたいんです….、と哀願した。さて、この話のいきさつには、それなりの背景がある。1年前である。旬を終えた40代の元男性アイドルが自殺を考えていたが、死ぬ前に何を思い立ったか歌舞伎町のラブホテルに入り、スマホの風俗サイトから適当に選び、平日の昼間で店も暇だったのと新規客とのこともあってNo1のレイナを引き当てた。施錠されていないドアを開けて部屋に入った時、灯りの消されたベッドに座る男に一瞬ギョッとしたが、すぐに自分が子供の頃にテレビで見ていた顔だと分かった。死を決意した人間の顔には独特の儚さが漂う。目の前にいても遠くにいるように感じるのだ。レイナは茨城県つくば市の田舎娘だが、実家は代々地元の議員を務めた家柄だそうで、めりはりのある体に凛とした気品のある顔立ちをしていた。男の切実な何かを感じ取り、その時は慈愛の心からか、献身的になり、つい自ら許してしまった。その後である。男は自殺を思いとどまり、過去に主演したドラマの再放送によって再ブレイクを遂げた。いったんは捨てようと思った命であるので、がむしゃらになり、テレビに出るたびにプロデューサーの無理難題をこなし、どんどん昇りつめ、その傍らで始めたサイドビジネスも大当たりし、世田谷区の用賀に家を建てるほどになった。サクセスストーリーは業界で広まり、新宿のデリバリーヘルスにとんでもない、『アゲマン』の女がおり、抱ければ人生の道が開けるとの噂が駆け巡った。お祭り騒ぎになり、来月の予約まで埋まっている。演歌歌手もあやかりたいと考えたのだ。もちろん本番行為は違法であるが、中には噂を信じて迫る輩もいるので、店も心配をしていた矢先の出来事であった。ラブホテルの管理人に話をつけて、ドアを力ずくで破ろうとした雷島を静止し、和季がヘアピンを二つ使ってあっけないほど簡単に開ける。同時に、中に滑り込んで、裏拳でみぞおちを強かと打つと、押し上げられた胃袋が一瞬で気道を塞ぎ男が気を失った。ベッドにはローションなどが入ったトートバックを抱きかかえたレイナがいた。瀧と義経が後から乗り込むと破顔一笑、興奮していたのだろう、助けてくれた和希に抱き着いて頬に軽く口づけをした。瀧が言う。『しばらく常連客だけにしぼろう。新規客はヤバい』『義経くんがいるから大丈夫だよ』『こいつ名前負けしてんだよ。いつもあやまってばっかり』『すみません』歌舞伎町の住人である。誰もが脛に傷を持つ身だ。瀧は名古屋市立大学を卒業したエリート商社マンだったが、社内の不正に嫌気がさして会社を辞め、つい最近になってから人づてで採用した。義経は山形県の海沿いの町の出身だが、ある事件をきっかけに地元を追われ、体格をかわれて仙台に本拠地を持つプロレス団体に所属したが、芽が出ずに、ケガで引退を余儀なくされた先輩レスラーである雷島を頼って東京に来た。エンジェルクラブは大衆店と呼ばれるランクの風俗店だが、やり手の瀧と優しいだけが取り柄の義経を女たちが信用して、レイナを筆頭に粒揃いのキャストで盛況だ。『だいたいさ、レイナさんがそんなアゲマンだったら、過去の彼氏たちはどうなってんだろうな』笑いながら答える。『元カレはね、地元の工場で、先月に班長になったって』 瀧も失笑した。地方の小さな工場である。スマホを取り出して慌ただしく営業を再開し、エルグランドにレイナを乗せると、残りの予約をキャンセルして待機所のマンションに戻る。そも、そも、レイナのアゲマンの話も、あやかったのはたった一人だけなのだ。この時までは。トラブルを解決した帰り道に、雷島が悪戯心から、歌舞伎町にいくつもあるスクラッチくじの売り場に和季を誘い、頬に口づけをされたご利益を試そうと冗談で勧めたところ、その場で和希が、―500万を….、当てたのである。
『ほっぺにチューで500万か。すげえな、その女』風間がソファで煙草をふかしながら言う。『あたしの許可なしで和季にチューね。いい度胸ね、その女』琴乃が険しい表情で言う。『時々いるね、アゲマンってさ、とくに商売女に』藤老人が笑いながら言った。風人車の事務所でいつものように和季の保護者たちが集まっていた。今のところ風人車直営のデリヘルは、高級店の、『シェヘラザード』と大衆店の、『エンジェルクラブ』『ダイヤモンド』の三店舗で、一日に約40人の女の子が稼働しており、シェヘラザードには現役のAV女優が3人いて、そのうちの1人が琴乃だ。もっともチャンネルと言って、更に複数の店舗のホームページと電話番号をつくり、値段設定も変え、客の込み具合に合わせて売り上げをコントロールする。同じ女の子でも、込んでいる時は高い値段設定の店から派遣して稼がせてやり、暇なときは低い値段設定の店からそれなりに内容も落として派遣している。『おまえサゲマンだよな』『やってもねえ癖に言ってんじゃねえよ』『おまえとはヤダな』『こっちもだよ。サゲチン』笑いながらの口喧嘩だ。琴乃が男のように、がっはっはっ!と笑う。当の和希は500万をさっさと口座に収めた。金銭に興味が無いのだ。そも、そも、林家の財産は巨大で、やがては地場産業の大半と、広大な山林を含んだ土地を相続する。『あの娘は、つくばの出身だって言ってたよね。色白で美人さんだよね』琴乃が切り返す。『日本三大ブスって知ってますか。仙台、水戸、名古屋』『それはオレの若い頃から言われているけど、ある物書きが適当に言ったのが広まっちまっただけだよ。何処の土地にも美人さんはいる。オレが言うんだから間違いねえよ。でもやっぱり、東京の女が一番だよ、琴乃ちゃん』藤老人は何処にいても女を褒める。取り入るのが上手いのだ。それで今まで入れ替わりで違う女を抱き続けて来たのである。家庭を持たなかったのは自分に子供が出来ないのを知っていたから。無精子症であった。『看護師資格を持ってますって言ってた子だよね』看護師、介護士は普段から患者に接しているので、異性の体に触り慣れており、風俗の仕事につける下地がそこで出来てしまう。藤老人も煙草をふかした。瀧と義経は女の扱いも上手いし毎日一定のあがりを持ってくる。心配なのは義経の気の弱さだが、それでも瀧を助けて日々車を走らせては、他のスタッフを面倒見ながら店を切り盛りしている。親も義経とはよく付けたものだ。体格は雷島を一回り小さくしたようだが、厚い胸板は立っているだけで威圧感があり近づき難い。しかし、人見知りでおどおどとしていて、ひょろっとしたサラリーマンにしか見えない瀧にしょっちゅう頭を小突かれている。田舎を追われるように出て来たらしいが、誤解されやすい見掛けと性格であるのは間違いない。そして時々、遠い目をしては、毎日漁に出るという80歳近い祖父の話をする。両親は早くに亡くなり祖父に育てられた。室生犀星(むろうさいせい)の詩にあるように、故郷は遠くありて思うものらしいが、帰るのを避けるべきところでもある。女をつくれば良いとアドバイスをしたが、奥手のようで、風人車に来て6年経つが気配すらない。琴乃が仕事に行って、藤老人は上の階にある自宅に引っ込み、事務処理を終えた風間は真夜中の集金までは時間が空くので西新宿のマンションに帰る。事務所は別の男たちが残った。雷島が風間の椅子に座ってソファには和季が腰かける。明け方まで営業をする店のトラブル解決のため、何人かの若い衆が待機する。そも、そも、24時を過ぎて営業するのが違法なのだが。電話はめったに鳴らない。それが一番良い。
レイナは化粧を落として洗面台の鏡で顔を見た。独り暮らしの休日は寂しい。日曜日、水曜日、木曜日の週3日を休みにしている。あまり出勤を増やすと客も日を選ばず来るようになるので、週4日出勤ぐらいのほうが暇な時間を作らずにすむ。入店した頃は休み無しだったが、常連客が付きだしてからは出勤を減らし、変わらない収入で拘束時間は半分ぐらいになった。単価が倍になったのである。瀧のアドバイスだ。もう25歳。茨城県の旧岩瀬市にある高校の看護師養成課程を卒業し、上野駅近くの大きな病院に就職したが、そこでいじめにあって辞めた。きっかけはピンク色の聴診器を持っていたのを先輩看護師に注意された事だが、病院の規則に色の指定までは無かったのを言い返したら、次の日からロッカーからものが消えるなど嫌がらせが始まった。同僚も最初は気遣って慰めてくれていたが、エスカレートすると関わるのが面倒になり避けられるようになった。小さなクリニックに転職し、辞めて、次は田端のスナックで働いたがストーカー被害で辞めて、いっそうの事、若くてキレイなうちに稼いでしまおうと、思い切って風俗の世界に飛び込んだ。学生の頃の努力は何だったのかと思う。実家から離れた高校に電車とバスで通っていたが、夜中まで勉強して、寝不足から降りるバス停を寝過ごし、運転手にしょっちゅう怒られていた。特に英語が苦痛で、日本語でもついて行くのがやっとなのに、専門課程では授業を英語で進めることもあるので、何故こんな面倒をするのかが疑問であった。母子家庭だったが祖父が土建屋を営んでいたのと市会議員を10年以上務めていたので暮しは裕福だった。片親の苦労は感じていない。姉は何処で知り合ったのかマレーシア人と結婚して地元に住んでいる。母親は最近車をぶつけたそうだが、近所の農家の手伝いとアルバイトで、元気な日々を送っているそうだ。ベッドのシーツをめくると若い男が、いや、男の子が、すや、すや、と眠っていた。新宿御苑の近くの高校に通う3年生だ。山手線で声を掛けられ、そのまま半同棲のような生活になった。会うと必ず体を求めて来る。若さにまかせて直線的な前後運動をするだけの可愛いお猿さん。起こして朝食をとらせて送り出す。今日は杉並区にある家に帰らせて、自分は、夜は、『エンジェルクラブ』のレイナになる。看護師時代から昼間寝るのは慣れているので、夕方までしっかりと眠り、目覚めると身支度を整えて靖国通りを新宿駅方面に歩く。歌舞伎町までは歩いて20分ほど。新宿二丁目北交差点の信号から右に入って、細い辻の奥にあるマンションが待機所になっており、道路には義経のエルグランドがとまっていた。『レイナさん、おはようございます』義経は性格が女性的だ。マメに掃除をしてくれるし、料理も上手い。まかないの食事が美味しすぎて体重が増えたキャストもいるぐらいだ。脱ぎ散らかした服もいつの間にかハンガーに掛けられている。2LDKのマンションに5~6人のキャストが常に待機していた。対人関係が苦手なキャストは新宿駅近くのネットカフェやドトール、ラブホテルの待合室に常駐している。外部待機のキャストは売上の持ち逃げ防止で預り金をもらうが、それでも時々持ち逃げする、『飛ぶ』女の子はいて、瀧が平謝りで藤庄吉に報告するが、咎められたことは一度も無い。―そんなもんだよ….、と言われて終わる。昼間のキャストは主婦やこれ一本でやっているプロが多いが、夜は社会人の副業や学生のアルバイトが多く、ほとんどが終電前には帰る。通しで朝の始発まで残るのは旬が過ぎて稼げないキャストたち。看護師時代は嫌な先輩に苦労させられたが、風俗務めの後ろめたさからか、この業界の先輩たちは優しい。壁には瀧が作った売上表が貼られているが誰も見ない。気楽なものだ。夕方17時出勤で15分前に待機所に入ると、もうその日の予約は埋まっていて、最初の客はホテルとコース内容を聞けば誰か察しはついた。予約は4人。かなり忙しい。送迎はどんなに近くても必ず義経が送る。新大久保のホテルに車を横付けしてもらい、入り口を入ると、三つ揃えのスーツに白髪をオールバックでまとめた、執事のような容貌の初老の男がニコリと笑った。階段で3階まで昇りチャイムを押すとドアロックが外された。日焼けした眼鏡の40歳ぐらいの男。常連だ。妻子持ちで、身の上話から高校の教師らしいのだが、必ず持参の体操着を着させられる。2人でシャワーを浴びた後で、競技用のブルマを履かされると恥ずかしさから顔を赤らめるが、それを見て相手は余計に興奮する。教師は趣味を兼ねて選んだ仕事のようだ。髪の匂いをしつこく嗅ぐ男のなすがままにされ、次に裸で横たわった男の上に跨り性器に触れると、体操着姿に興奮した男の股間ははち切れんばかりになっていた。先端を指先で触ると小さく悲鳴を漏らす。体操着は最後まで着たままがいつもの注文だ。手で擦ったり、口に含んだり、ローションで弄びながらゆっくり射精まで導いて、余った時間はお喋りに興じて90分のコースが終了する。客が払ったプレイ代の50パーセントと指名料2,000円、コスチュームプレイのオプション代2,000円がレイナの稼ぎだ。しかも税金がかからない。ホテルからホテルを梯子して予約客を全部消化し、真夜中に待機所に戻り、瀧が計算した日当を確かめて、受け取りノートに日付とサインをしてからマンションに帰る。靖国通りを独りで歩いた。途中の牛丼屋に寄って牛皿とポテトサラダを買う。本日は6万ほどの収入。それと常連客からCOACHの財布を貰った。売れ残った古いモデルをドン・キホーテで購入したと思われるが気持ちが嬉しかった。店で友達になった女の子に、移動時間が勿体ないから歌舞伎町のヘルスに移らないかと誘われたが、看護師時代やスナック勤めのトラウマから、店舗型の店に移ってトラブルに合うよりは、常連客も多く持てたのだし今のままでよいと考えて断った。瀧も義経も優しい。マンションのエントランスで空のポストを横目に歩く。403号室。ドアを開けると入り口に玄関と呼べるものは無く、そのままリビングにつながり、キッチンの他には、トイレ、洗濯場、風呂場が一体化したスペースがあるだけ。家賃は14万なのでこの界隈にしては安い。動物も飼える物件だが犬や猫は勝手に食事をしてはくれない。小さかった頃に飼ったウサギを餓死させたこともあるので動物を飼うのは自分の性格に向かないと分かっている。面倒くさがりだ。でも、独りの部屋は寂しい。高校生を部屋に連れ込んだのは寂しさを紛らわすためであり、子供なら安全だし、素直で扱いやすかったから。この2年のルーチンの間に、贅沢と言えば友達に誘われてグアムに行ったぐらいで、貯金は半年前に一千万を超え、ペイオフの関係で別の口座を作り今も増え続けている。30歳まで続ければ楽に家が買えるだろう。欲が、無いのだ、自分は。母子家庭だったので不安もあり看護師を目指したが、資格を取った段階で満足してしまった。資格が目的であり看護師はどうでも良かったのだ。白衣の天使になるのが目的では無く、白衣の仕事がもたらす給料が目的だった。だとしたら、今は金銭面では達成しているが、30歳を過ぎたらどうなるのかと考える。待機所で暇を持て余し、蓼食う虫と言うが、熟女専門のチャンネルからお声がかかればいいが、待っているだけで、『お茶を引く』一人も付かない日もある40代、50代のキャストたち。保証金で交通費ぐらいは出るが、それも続けば居づらくなって、自ら去って行く。余談だが母と娘で出勤しているキャストもいる。今の世の中はそれぐらいセーフティネットの隙間が大きく、救いきれない日本人が実在する。冷蔵庫から酎ハイを出してプルトップを開け、牛皿とポテトサラダをつまみに深夜番組とユーチューブを楽しんで、3時ぐらいに寝てお昼ぐらいに起きる。夕方から高校生が泊まりに来るので、ビールを多めに買っておかねばならない。
夕方、ルミネエストの喫茶店で、神経質そうな顔をした、如何にも山の手の奥さまといった身なりの女と向き合って座っていた。高校生の母親だ。若い男は頭が悪い。誰かに話したくなる気持ちはわかるが、付き合いだして一ヶ月半ぐらいでばれて、母親に呼び出されるなどと誰が思おうか。『息子は大学受験を控えた大事な時期です。もう二度と会わないで下さい』テーブルに分厚い封筒が置かれた。100万入っていると言う。なんと楽に金が転がり込んでくるのか。つい先々月に山手線で声をかけて来ただけの高校生を相手に恋愛を楽しみ、貞操概念の低いスケベな女が、言いなりにして欲望の虜にして愉しんだうえに金が手に入る。しかし、貰う気にはなれなかった。釈然としない。逆にあの高校生のにきび面が憎らしく思えて来た。何故こんなところに呼び出されて、金まで出されて、言い包められなければならないのだ。『彼、私とのこと、何か話しましたか』『はっ?』『すごく上手でしたよ』毅然とした母親の顔が見る見る紅潮して手もとのタンブラーを掴む。その手を、背後から掴まれた。和季だった。封筒は置いたままで、母親は憤慨しながらも支払いを済ませて去った。驚いたが、『風人車の人はお節介もするのね』シレっと言う。『あなたは青少年を誘惑しました。罪になります』各都道府県が定める青少年保護育成条例である。風呂場でよく清めてやり、プロの手管で楽しませたのだから、あの高校生はこれから付き合う女たちでは満足はしないだろう。レイナは和季を座るように促した。風人車に来た頃から見ていた。ヘルス出身の下品な女、琴乃といっしょにいる男。軟禁状態から解放され、安堵感から大胆になって頬に口づけをしてしまったが、話すのは初めてだ。端正な顔をしている。きめ細かい肌と無駄な肉の無い体つき。滑らか髪の毛。瑞々しい双眸がレイナを捉える。『なんで此処にいるの』『雷島さんを通して、瀧さんから頼まれました。瀧さんと県さんは忙しいので、仕事以外の時のレイナさんを見守って下さいとのことです』『監視していたの』『見ていただけです。気づかれないように』自分のiPhoneをGPSで追跡出来るようにしてあるとは聞いたが、知らないうちに護衛まで付けられていたのは驚いた。瀧も心配しすぎる。『そう言えば、あなたもスクラッチで、500万当てたって話じゃない』ブイネックから細い鎖骨が見え隠れする。高級ブランドのデニムに高そうなジャケット、上品な光沢のブーツ。IWCの時計。合成繊維の細長いキューケースを傍らに置いている。黒を基調にした服装に、顔、手、胸元など、露出するパーツの全てが映えていた。ぶち壊してやりたいぐらいに美しい男だ。そうしたら、あのいけ好かない女、琴乃はどう感じるだろう。えげつない仕事で稼いだ金で新車のBMWを乗りまし、曙橋の高級マンションに住んでいる。質問には答えずに和季は、バックからコンパクトを取り出して化粧を直せと言う。失礼だと思ったが言われるままに鏡を見ると、背後の男と視線が合った。あの演歌歌手がいた。驚いて振り返ると観葉植物の影に身を潜められた。促されて外に出ると階段を上がってアルタ前の広場に出る。薄暗くなっていた。百果園の脇から歌舞伎町一番街の入り口に向かう。人込みをかき分けて、ネオンの光の中を、和季の背中を追って走る。何人もの男たちが脇の辻から飛び出てレイナを捕まえようとするが、和希に阻まれて近付けない。足をすくわれて転んだり、拳で鼻っ柱を潰されたり、ナイトに守られるお姫様のようで、まるでファンタジーの中にいるようだ。一瞬、和季の顔が眼前に迫り、長い腕が後ろにいた男の喉笛を潰して、背中越しにうめき声を聞いた。レイナは、何故、自分が追われるのか分からなかったが、和季に腕を掴まれて走り出す。男たちは二人を見失った。スマホからSNSの書き込みを見せられる。―新宿デリバリーヘルス、エンジェルクラブ、レイナ、生け捕りにしたら諭吉千枚….、5ちゃんねる、爆サイ、ホスラブ、Twitter、LINE、facebook、あらゆる手段で広まっていた。スマホに着信が入る。番号非通知だ。和季が電源を切るように指示するがレイナには意味が分からない。通信業者に仲間がいるとしたら、GPSからメートル単位の正確さで場所が割り出される。不気味だ。和季のスマホに着信があった。風間から、人を迎えにやるから動くなと、の指示が入る。細い辻に身を潜めていると、風間がもっとも信頼している2人組が迎えに来て、4人で歌舞伎町に向かうと、酔っ払い、風俗客、キャッチ、キャバ嬢、ホストの他に、国籍、職業不明の大勢が闊歩する、街はいつもの喧騒に戻っていた。誰が拡散したのかはわからないが、ホームページでは休みになっているにもかかわらず、今日の午後からレイナ目当ての電話が店に殺到したそうだ。―アゲマンの女に会わせてくれ….、と。
それから2週間は何事もなく過ぎた。瀧はホームページからレイナの写真を外して、いくつかあるチャンネルに名前を変えて出勤させた。常連客が離れてしまうがこの際は仕方がない。 夕方になり、事務所から歩いて新宿駅の東口改札に面接の女の子を迎えに行く。 キャストには、丁寧に、とにかく、丁寧に接すること。 しかし、 ー女の子さま….、 にしてはいけない。そこが難しい。厳しい管理者として、舐められないようにスタッフとキャストの全員に接する。その意味では、瀧と義経はベストの組み合わせだった。義経は、生来の優しい性格から怒ることが出来ないうえに、几帳面で料理上手であり、そして、何よりも面倒見が良い。 レイナとも異常に仲が良く、ドライバーは絶対に義経でなければ出勤はしないとの約束もあった。義経が奥手でなければ、『店のキャストには手を出さない』の決め事があったにしても、とっくに店公認のカップルになっていただろう。 だが、地元を追われるように出たきっかけは傷害事件なのだから、普段は怒らない人ほど怒らせてはいけないものだと思う。 小柄でやせっぽちの瀧と比べると体重は倍以上。もしも、馬乗りになられて、殴られでもしたらと考えると寒気がする。 思い出す。藤老人から義経の仕事の面倒を頼まれたときに聞いてはいる。義経は山形県の海沿いの町の出身だ。漁業、林業、農耕で成り立つ、古き日本の原風景をそのまま写真に収めたような長閑な田舎町だ。地元の先輩に将来を有望視された水泳の選手がいた。子供の頃からめきめきと頭角を現し、オリンピック出場を期待されていた逸材で、テレビ取材も何度も受け、大きな大会が近付くと地元の駅に応援の横断幕が張られた。ヒーロー誕生に町が活気づいた。しかし、天賦の才に恵まれた者は、例にもれず人間として何かが欠けており、傲慢でトラブルメーカーであり、特に女癖が悪く、未遂も含めてレイプ事件を数回起こしたが、その度に地元の有力者たちが被害者を金と人脈で丸め込んでいた。その日は、義経と仲の良い幼馴染の女の子を通学路で待ち伏せして、畑の農機具小屋に連れ込み悪さを働こうとした。偶然にも自転車で通りがかった義経が踏み込んで、説得を試みようとしたところ、興奮した相手は農具で、義経の頭を、無慈悲にも叩き割った。躊躇が無い、手加減を知らないのは恐ろしいことであり、そも、そもが、善悪の箍が外れた人間だったのだ。義経は、血管の他にも、頭の中で、何かが切れたのが分かった。本能のままに掴みかかり、恐怖で歪んだ相手の顔を、何度も、何度も、殴り続け、気付いたときには、両拳は血にまみれており、義経自身の頭からの出血はバケツで血をかぶったようで、状況と相まって、一部始終を見ていた幼馴染は気を失ってしまった。そして、町全体の期待を背負ったヒーローは、ケガで再起不能となる。事件自体が町の醜聞なので、これまた有力者たちが手を回して揉み消してしまったが、噂が広まると事情を知らない者たちからの嫌がらせが始まり、留守のあいだに手当たり次第に家じゅうのガラスを割られたり、朝起きたら郵便受けに汚物を詰め込まれていたり、最後は祖父の所有する漁船に悪戯されそうになったので、仕方なく高校を中退し、逃げるように地元を離れて東北の大都市である仙台市に出た。飲食店で住み込みのアルバイトをしていたところを興行師に体格を気に入られ、東北を拠点にするプロレス団体に入ったが、練習が厳しすぎて、先に退団した先輩レスラーである雷島を頼って東京に来た。たしか、そんな内容だったと、記憶している。東口改札に到着してスマホから面接希望者に電話を掛ける。すぐ近くにいた女が軽く手を挙げながら会釈をした。派手な服装だ。電話ではキャバクラの経験があると言っていた。25歳。ちょうどふるいにかけられる年齢。キャバクラ嬢としてさらにキャリアを積んで稼いで行くか、足を洗って客と結婚するか、風俗嬢に転身するかだ。一度でも贅沢をしてしまうと生活レベルはそう簡単には落とせない。スタイルもいいし顔も悪くない。ーでもね….、瀧は見た目が良いだけでは生き残れないのを十分見てきた。逆にそうでもないような女が人気嬢になって行くのも見てきた。素材は確かに重要だが、胸は豊胸すれば良いし、顔は整形すれば良い。夜の街で生き残るには、『気の強さ』であったり、『したたかさ』が必要なのである。それにしてもだ。レイナにしてもそうだが、年々風俗業界に流れて来る女の質が高くなっているのは、その入り口であるキャバクラの仕事が世間に認知されたからであり、若い女に夢を与えるような発信をしてくれるメディアに感謝をしなければならない。いつも使う喫茶店に連れて行って面接してから、早速、『体験入店』と称し、今日から働いてもらうとしよう。相手に考える時間を与えてはならない。機を見るに敏なのだ。同時に、つい先ほど、レイナを送り出した義経からの着信が入る。嫌な予感は当たるものだ。義経の第一声は、ーレイナさんがいなくなりました….、だった。予想はしていたが、仕事柄、守るにも限界がある。義経によると、普段通りに新大久保のラブホテルに送迎をしたが、入室とコース内容の確認電話が入らなかった。急いで部屋に向かうと、中では若い客が震えており、話を聞くと、何でもドアを開けるなり背後から二人組がレイナを押し倒すように踏み入り、一人の男が片手で口を塞ぎ、空いたもう片方の手の親指と人差し指で喉を摘まむと、簡単に気絶させて、そのあとは大きなスーツケースに押し込み去っていったそうだ。若い客は、風俗で遊ぶ後ろめたさから、事件に巻き込まれたのをおおやけには出来ず、逃げようとしたところに義経が飛び込んで来たので、人さらいが自分の口封じに戻ったのかと思ったそうだ。仕事用のタオルやローションの入ったトートバッグと、私物のハンドバックは部屋に残されていた。スマホはハンドバックの中だ。電話を切り、面接の相手に、『採用だから明日から来て』と告げると、瀧はスマホを操作した。対策はしてある。レイナにはスマホとは別に、これはポケットに忍ばせておけと伝えてGPS発信機を持たせておいた。親が子供を見守る目的で販売されているものだけあって性能は抜群だ。500円硬貨よりも一回り大きいぐらいの発信機がお守りとなり店の大切なキャストを探してくれる。しかし、簡単に気道を塞いで、気絶させる妙な技術を持っている。完全にプロだ。急がないと何をされるか分かったものではない。『うちの大事な稼ぎゴマを』声に出して無意識に頭をかく。スマホの画面には逃走経路がポインターで示されていた。都道4号を中野坂上の方に向かっている。車だ。東京都内を車で移動するとどう走って早くは動けない。しかし、首都高から近県に移動されると面倒だ。風人車の事務所に連絡して状況を話すとアルタ前で待つように指示された。すぐに大型バイクに乗った人物が現れる。キューケースを担いだ林和季である。タンデムシートにまたがると、国内で手に入る大型バイクなかではトップクラスに位置するスズキのGSX1300Rハヤブサが急加速する。大都市の混雑の中を移動するにはこれに敵うものはない。後方に吹き飛ばされそうになり、瀧は面食らったが、叫び声をあげたいのを必死にこらえ、スマートフォンの情報を的確に和季に伝えた。そして直ぐに気づく。怖かったのは最初の加速だけで、安心して乗っていられるのだ。ーこいつ、運転上手いな….、程なくして、塗装業者の社名が入った白い軽バンに追いつく。20年前の使い古された中古車が渋滞のなかにモブのように紛れており、GPS発信機から送信される情報がなければ犯罪が行われているとは誰も気づかない。瀧は横付けしてくれと頼んだが、和季は風間から、『目的地まで行かせろ。それからでも遅くはない』と指示を受けている。商売女の身柄などどうでもいいが、デリバリーヘルスの収益は大きい。藤庄吉の店にも、また、新宿の他の経営者の店にも影響が出てしまってはいけない。問題は詰めて根っこから解決しておくべき。そうでなくては大事な和季を向かわせる訳が無いのだ。そもそも、ー自分の身は自分で守れ….、である。夜の街で働くなら当然のことだ。渋谷でも、池袋でも、稼ぐ場所はいくらでもあるのだから。なのに、無理をして、新宿にこだわったレイナ自身が悪い。風俗営業許可を持っている店なので、所轄の新宿署に通報するのも考えたが、国家権力に動いてもらうには、『風俗嬢が誘拐されました』では弱すぎるし、また、藤老人の人脈なら、動かしてしまえるのだが、借りは必要以上につくるものでも無い。GPSが使えているので、視界から遠ざかって後を追ったが、軽バンは新宿方面に引き返し、新大久保駅からそう遠くない、戸山公園の傍にある駐車場に入った。荷台から大きなスーツケースを降ろし、押して歩く坊主頭の太った男と、運転席からは、金髪の年齢不詳の男が降りて後を付いて行った。古びたマンションのエレベーターに乗り込む。オートロックで無いのは助かった。和季がそれとなく入ってエレベーターが止まったフロアを確認して戻る。『5階です。おそらく4号室』『何故、部屋番号まで分かる?』エントランスの郵便受けの数から5階には11室あるのが分かったが、4号室の名札には、あの演歌歌手の名前で〇〇〇〇音楽事務所とフルネームで記載があり、その下には○○○○歌の教室と書かれていた。彼は、このマンションの一室を、自宅と個人事務所を兼ねた素人相手のカラオケ教室にして細々と生計を立てていたのだった。瀧は怒髪天を衝いた。そこにタイミング良く義経のエルグランドが到着し、血相を変えた2人の男は会うなり合意し、勢いのまま、勇んで演歌歌手の事務所に向かい、そのままドアを開けさせて中になだれ込んだ。中には驚いた顔の演歌歌手と、坊主頭の男、それと金髪がいた。実行犯の二人は遠目からは分からなかったが、ともに大柄で体格が良い。金髪が咄嗟に拳のいっぱつで瀧を失神させるが、瀧の後ろにいた義経は怯むことなく、狭い玄関で両腕を盾にし、ラガーマンのように突進をして金髪を弾き飛ばし、そのまま奥にいた坊主頭の巨漢を、部屋の中の家具をなぎ倒しながらガラスを突き破ってベランダまで押し出した。まさに猪突猛進だ。一瞬で2人同時に気絶させた。と、思ったが、坊主頭はすぐに立ち上がり組み付いて来る。義経のベルトを掴み100キロ近い体を軽々宙に浮かせると、壁に向かって投げつけた。頭をしたたかと打ち付け、ふらふらしながら立ち上がろうとする義経の顎を、張り手が捉える。痙攣する瞼の裏側で、緑色の光がちかちかし、意識が飛びそうになるのを義経は堪えて、思い切り頭突きを入れた。巨漢同士が、ほぼ相打ちでフロアに倒れるが、やはり最初のダメージが大かったようで、義経のみが立ち上がる。気を失っていた瀧も立ち上がり、朦朧としながらも、義経の突進で部屋の隅に飛ばされた紫色のスーツケースのファスナーを開けた。中からレイナが飛び出す。一目散にトイレに駆け込み、一瞬の間の後で出てくると、鬼の形相でつかつかと演歌歌手に歩み寄り、股間を蹴り上げる。倒れて悶絶する相手の股間をさらに踏みつけると、パンプスの踵に、小さな生き物を踏み潰したような、何かが弾けたような感触があった。振り向く。瀧に、『助けが遅っせんだよ』と、怒鳴った。もう少しで、スーツケースの中に用を足す寸前だったそうだ。ここでやっと風間も新宿署に一報を入れ、懇意にしている生活安全課の刑事にお手柄として、誘拐ではなく、戸山公園の近くのマンションにデリヘルを派遣したらトラブルがあって、それを解決してもらった、と云う事で話をつけた。義経が、血走った目で、肩で息をする。突き破ったガラスの破片で顔や手足に切創をいくつも作っていたが、あふれ出たアドレナリンのせいで痛みはまったく感じていなかった。あちこちに血が滲ませ仁王立ちでレイナを見つめる。こんな姿になってまで自分を助けてくれた男に女心がときめかない訳が無い。レイナは、近付いて、義経の厚い胸板に顔をうずめる。10分と待たずにパトカーが2台到着し、まだ夕食時の早い時間だったのでマンション周辺は少しの騒ぎになったが、流石は新宿区民、『またいつものトラブル』ぐらいのことで収まり事件も解決した。警官の事情徴収を終えた、レイナ、義経、瀧がマンションから出ると、和季と雷島、それと、見たことのない女が一人いた。女は、顔を、それこそしわくちゃにして、泣きながら小走りに近付くと、義経に抱き着いた。『義経くん、探したんだよ。山形に帰ろう。もうみんな誤解は解けたよ。じっちゃんも待ってるよ』『チエちゃん』義経が故郷を追われるきっかけとなった幼馴染だった。なんでも、義経が再起不能にした先輩は悪癖が抜けず、その後も何度か罪を犯したが、後ろ盾の地元の有力者たちは既にそっぽを向いており、捕まって実刑となり、それまでの悪事がすべて明るみに出ることになった。幼馴染は高校を卒業後、義経を探して仙台市に就職して足跡を追ったが、義経が同市にいたのは1年にも満たず、また、当時の勤め先である飲食店は閉店しており、プロレス団体も存続はしているが人の入れ替わりが激しく、雷島にたどり着くまでに時間がかかってしまった。風人車の事務所を訪れたのがつい30分前である。義経は意図して自分の居場所を誰にも教えていなかった。それを、田舎娘が山形県から自力で東京まで追いかけて出会えたのだから奇跡だ。『あたしね、まだ誰とも付き合ったことないよ』潤んだ瞳で上目遣いで言う。唖然とする周囲を尻目に、2台のパトカーの回転灯の明滅のなか、幼馴染同士は見つめ合った。
『すげぇ話だな』『その女の子が凄いよ』風間と琴乃だ。風人車の事務所で煙草をふかしながら無駄話に興じていた。義経は故郷に戻った。元々大人しく誰にでも親切な青年であったので近所の人たちはあたたかく迎え入れてくれた。そして、幼馴染とは、再会からすぐに籍を入れた。瀧は得難いスタッフを失ったが、気落ちせずに、いくらかの退職金と祝い金を義経に送ったそうだ。『レイナって子はさ、アゲマンだとかって騒いでいたけど、自分の運はどうにもならないんだね』『違げぇねぇ。可哀そうだな。気があったんだろ、義経に』気落ちしたのはレイナだ。しばらく仕事を休んで茨城県の実家に帰っていたそうだ。25歳は女として色々と考える時期なのだろう。テレビのスイッチを入れる。甲高い声で歌うヘヴィメタルバンドが出ていた。テロップによると、実力派ヴォーカリストを中心に結成された新バンドであり、今もっとも注目されるアーティストだそうだ。『あれぇー、この歌ってる人、歌の先生。売れない演歌歌手の人。戸山公園の近くのマンションの人でしょ』『なんで分かる』 『あたしも何回か呼ばれたよ』『マジか。声が高ぇな。でも、ちゃんと歌えてるぜ。ジャンル変えたんだな』演歌歌手は、身から出た錆だが、睾丸の摘出手術を受けることになった。その結果40歳を過ぎて声変わりをする事になる。レイナのご利益は無かったが図らずとも表舞台に立つ事となった。また、新宿署の取り調べで後から分かった事だが、演歌歌手が人づてで雇った坊主頭と金髪は、表向きは本職の塗装工だが、裏稼業としては、それぞれバウンサー(用心棒)と、逃がし専門のドライバーであった。裏稼業も細分化されており人知れずに対象者を逃がす生業もある。因みに、義経が頭突きでたおした坊主頭は、地方から志を持って上京したが、辛い練習に耐えかねて半年ほどで逃げ出した、元見習い力士であったそうだ。プロではあるが、どちらも、人をさらうのは専門外だった。今回はそれが幸いして短時間で発見することが出来た。その道の専門であったならばGPS発信機などの小細工は通用しなかっただろう。更に、余談であるが、これから約20年の後、永田町で活躍するある若手の議員が、美人アナウンサーとの路上キスを週刊誌にすっぱ抜かれて失速した。不倫であった。レイナと半同棲をしていた高校生の20年後の姿である。世の中には、アゲマンも、サゲマンもいるようだ。ひと時の熱病のように浮かれ騒いだ、新宿の、『アゲマン』のデリヘル嬢の噂話はすぐに忘れ去られた。もう何年か、あと少し稼いだら、レイナも去って行くだろう。遊女とは、蔑まれて、卑しい存在として見られるものである。されど遊女とは、その内に菩薩を宿し、艶めかしく、慈愛の心をもって宿り木のように男たちを癒し、たとえ一時であっても、世の中の憂さを晴らしてくれる存在なのだろう。琴乃は事務所を出るとスマホを見た。今日はデリバリーヘルス、『シェヘラザード』の琴乃だ。瀧からラインをもらい、ホテルとコース内容で客はだいたいの察しがついた。そこで、思い出したように、心の中で呟く。ーさて問題です。ネットで噂を広めたのは誰でしょうか….、琴乃もまた、いけ好かないデリヘル嬢の、高飛車なあのつくばの田舎女を良くは思っていなかったのである。引っ搔き回して鬱憤を晴らした。気持ちを切り替えてスマホをハンドバックに仕舞う。逞しくなければ生きては行けない。夜の帳が降りるまえから、飲み屋で飲んだくれる正体不明の男たち、女たちの横を通り過ぎて歩くと、颯爽とした琴乃に男たちの目線が釘付けになる。そして女たちの嫉妬の眼差し。心地よい優越感のなかを琴乃は進んで行った。身体に菩薩をひそませて。]]>
junction
http://switched.exblog.jp/29590909/
2023-06-04T17:33:00+09:00
2023-06-14T18:11:30+09:00
2023-06-04T17:33:18+09:00
end_of_eternity
未分類
話題:junction
久々にブログを書きますが、Facebookにはちょこちょこ日常をアップしていますが、こっちは、ほんとのほんとに昔からの知り合いしか知らないので、心情を吐露します。
仕事で疲れています。
プライベートもね。
それで、仕事を縮小することにしました。ひょっとしたら年内に退職も考えています。
負けましたよ。色々と。
それと、プライベートでも、ある意味、裏切られましたわ。
独りぼっちになりました。
今まで、ありがたかったな。特に、いちばん長く相手をしてくれた女のことを思い出すようになった。
最初は見た目で惚れて。中身は、嘘つきで、何にも無い女だったけど、優しさと、お互いの気持ちだけは、本物だった。でも、その手を振り払ってしまう。俺は、ほんとにダメな、自信の無い男なんだと思う。
仕事を変えよう。
あと、10年生きるために。
写真はウイグル族出身のモデル、ディリラバさんね。
了。
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遠い日の記憶
http://switched.exblog.jp/29453929/
2022-12-24T22:39:00+09:00
2022-12-31T02:31:54+09:00
2022-12-24T22:39:05+09:00
end_of_eternity
未分類
スキャナーを買ったので本の自炊(PDF化)をしています。
おはようございます。
話題:遠い日の記憶
ヤフオクで昔のグラビア誌を買いあさった。
好きだったグラドル、あのころはそんな言葉も無かったけど、今見ても美しい裸体を惜しげもなくさらしている。
ノスタルジーにひたった。
でも、けっきょくはエ○本じゃん。置き場に困ってスキャンして保存している。
恥ずかしいし、バカらしい。自分の彼女でもないのに。50歳。そも、そも、そんな年齢じゃないだろう。
でもね、見ていると、様々な記憶が甦ってくる。1991年。19歳。カーキ色のミリタリージャケットとタートルネック、やすっぽい腕時計。50㏄のバイクで意味もなく走り回っていた。しかし、実家と云う磁場から離れられずにいた頃。
実家を出たのが24歳。
遠く、遠く、目指して、走って、転んで、泣いて、わめいて、
虹は消えるし、星に手は届かないし、
少年は憧れを何一つ手に入れられないでいる。
もう少し、頑張って、生きよう。
寒い夜にそう思った。
了
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本日のσ(゚∀゚ )オレ
http://switched.exblog.jp/29397861/
2022-10-23T21:34:00+09:00
2022-10-25T00:57:37+09:00
2022-10-23T21:34:36+09:00
end_of_eternity
未分類
おはようございます。
話題:本日のσ(゚∀゚ )オレ
時々こんなタイトルで日常を書き残しております。
まったくをもっての自分向けの記事です。
土曜日は朝一で幸楽苑のモーニング。しかし、ラーメン屋がモーニングってコロナになってから何が何だかわけわからんw
そして、午前中から会社でサービス休出Σ(・ω・ノ)ノ!腹が立つが仕事は少しずつでも進めたい。
お昼は洋食屋でオムライス。デミソースで食べるのは京都のオムライスだが、関東はやっぱりケチャップがいいな。
会社に戻って仕事。疲れたので早めにあがって、…ちょっと待って、早めにあがって、そもそもがサービスなのよね。orz…
お寿司屋でちょこっと贅沢な晩飯。アパートに帰宅して眠るも、眠れずにスマホゲーム三昧の残念な独身男。
日曜日は10時までぐっすり眠って、洗濯を済ませてから、行きつけの定食屋さんで天津飯。美味しい。
そして、土曜日に引き続き会社でサービス休出。
これ見ている60歳のσ(゚∀゚ )オレ、よーっく読んどけよ、お前はこんなに社畜だったんだぞ。会社辞めれたか???
17時には切り上げて実家へ。
実家は農家なので食べ物はいつでもある。
魚肉ソーセージと、お供物の梨を半分食べながら、おふくろのつくる晩飯を待つ。
マグロの刺身、サヤエンドウの味噌あえ、春菊の味噌あえ、イカでしっかりと出汁のとれた謎のスープを食べた。食べ終わったらなぜか温泉饅頭が出される。おまけの落花生の塩茹でも美味しかった。
おやじがパチンコから帰ってきたので交代で帰る。
帰り道でダイソーへ、来年のカレンダーを購入。ついでにマフィンを買って頬張る。これも美味しい。
さて、これから部屋で少し仕事をして、明日に備えますか!
なんかさ、忙しかったけど、両親にも会えたし楽しかった。
では、では、
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